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ドルトムントvs.シャルケは特別だ。
94年間で増し続ける熱と激闘の系譜。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/09 09:00
ブンデスきっての人気クラブ、シャルケとドルトムント。両チームがしのぎを削ることで、地元ファンの熱も上がってくる。
クラブ関係者と記者陣の丁々発止。
一方のドルトムント。クラブスタッフであるセバスティアン・ケールはこの試合の分析を記者陣に聞かれると、しばらく言葉を探していた。実際には7、8秒だったが、非常に長い沈黙に感じられた。
「勝ち点1を持って帰ることをプラスに考えたい。シャルケも終了間際にDFを入れてきたことから、引き分けで満足と思っているんじゃないだろうか。最終的には両チームとも満足な結果となったと思う。
ものすごくゴールチャンスがあったわけではないが、とてもインテンシティの高い試合だった。まだまだやれることはあるというのはもちろん感じているが、勝ち点1でオッケーだ。小さな一歩だ」
見つけ出した答えは記者陣にストレートには響かない。結果はオッケーかもしれない。でもダービーでこの内容は? たたみかけられる。ケールもそのことはわかっている。
「内容的にもっといいサッカーができることはわかっている。だが、今日は別の優先順位があった。それを受け入れて、ポジティブにやっていくことが大事だ」
そう語り、微笑んだ。微笑もうとした。
ロイスは反省しつつもポジティブ。
続いて記者陣の前で応対したのはキャプテンのロイス。
「今日の内容には満足していない。唯一ポジティブなのは無失点で終われたこと。軽やかさがない。もっとスペースの間で動かないとだめだ。そして勇気をもってそこへプレーしていかないと。リズムがずれるとシンプルな技術でもミスが出てしまう。
パスが出てくるべきところで出てこなくて、今か今かと待って、やっと出てきたみたいな感じだと、トラップでずれが出てしまうこともあるんだ。ここからまた抜け出すためにチームとしてハードに取り組んでいく。勇気を持って、目的への意志を持って、プレーしていく。それを取り戻せたらまたいい試合ができる。批判を受け入れて、ピッチ上で自分たちのプレーに集中して取り組んでいくだけだよ」
キャプテンは現実を見て、反省の弁を口にし、それでもポジティブさを失わずに進むことを誓った。今が苦しい時期なのは間違いない。ファブレ監督の手腕を疑問視する声も上がってきている。今が正念場だろう。そして優勝を実現するためには、こうした障害を自力で乗り越えなければならないのだ。