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ドルトムントvs.シャルケは特別だ。
94年間で増し続ける熱と激闘の系譜。
posted2019/11/09 09:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Uniphoto Press
シャルケのホームスタジアム、フェルティンス・アレナは鮮やかな青と白で彩られていた。ゴール裏に掲げられた大きなバナーには彼らの思いがストレートに表現されている。
「若かろうと、年を取っていようと、でかかろうと、ちいさかろうと、関係あるか! シャルケは永遠に俺のクラブだ!」
この日はドイツで「母なるダービー」と呼ばれるシャルケとドルトムントによるレビアダービーが行われた。ドイツ中のサッカーファンが注目する伝統の一戦だ。スタジアムのアウェー席からは黄色の発煙筒が連続でたかれ、ドルトムントコールが一瞬場を支配する。
だが直後、その数十倍はある音の波が飲み込み、かき消していく。ドルトムントを強烈にヤジり、シャルケをたたえる声がスタジアムの屋根に跳ね返り、その響きが観戦している私たちの身体を揺さぶっていく。
94年間でシャルケの60勝42分52敗。
普段から熱い応援で知られる両クラブが己の意地と歴史と尊厳と、すべてをかけて対決する。わずか35kmしか離れていないところに居を構える両クラブによる最初のダービーが行われたのは1925年5月のこと。この試合はシャルケが4-2で勝利した。
その後もシャルケが6度もドイツ王者に輝くなど、国内トップオブトップのクラブとして君臨していた時期だ。そのため戦績はしばらくシャルケが優勢で、練習試合を含め21試合で20勝と圧倒的なパワーバランスを誇っていた。
それから94年の時が経つ。これまで公式戦で154回激突しているが、創世記のアドバンテージがある分、全体としてはシャルケが60勝42分52敗とわずかにリード。ただ、1943年にドルトムントが初めてダービーに勝利してからの戦績は、ドルトムントが51勝43敗と勝ち越している。
ブンデスリーガがスタートしてからの55年間では94回対戦し、ドルトムントが33勝29分32敗、ゴール数も147対137と、ほぼ互角の戦いを繰り広げつつけている。