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元浦和監督フィンケが土台を築いた、
好調フライブルクの独自性とは。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/18 11:40
かつて矢野貴章も所属した経験のあるフライブルク。ブンデス1部の舞台で独自性を貫いている。
選手獲得でも独自路線を突き進む。
育成だけではない。トップチームにおいても同様のことがみうけられる。プロで羽ばたくことを夢見る若手はみな、自身を成長させてくれるクラブを求めている。レンタルでも、完全移籍でも、行く先で確かな手応えを感じられる毎日を望んでいる。その点でフライブルクは、これまでに確かな実績を残している。
監督のクリスティアン・シュトライヒは、就任9年目である。戦い方や選手起用がぶれてしまい、ベクトルがあっちこっちに行ってしまうクラブが多いなか、人心掌握に優れ、確かな戦術家であり、どっしりと構えることができるシュトライヒという監督が、常に一貫したビジョンを提示している。これは、成長を渇望する選手にとって大きな魅力だろう。
選手獲得に向けての目のつけ方も独自路線を進んでいる。最近では、イングランドのビッグクラブで出場機会をえられない若手選手がブンデスリーガで活躍する例が増えてきている。ドルトムントのジェイドン・サンチョはその代表格だろう。だが、フライブルクはドイツ国内の若手選手を綿密にスカウティングし、獲得を決断する。
バルトシュミットという代表格。
ルカ・バルトシュミットは、その代表格だろう。フランクフルト、ハンブルガーSVで満足にチャンスらしいチャンスを与えられていなかったが、フライブルクは彼の持つ左足の素晴らしさをどこよりも高く評価し、獲得を決断した。その後U-21ドイツ代表では主軸となり、U-21欧州選手権では得点王に輝いた。ここ最近は、ドイツ代表にも常時呼ばれている。
あるいは、ロビン・コッホ。3シーズン前、2部リーグのカイザースラウテルンから獲得したときは正直、疑問に思ったファンも多かったことだろう。
だが、その潜在能力を最大限に引き出すだけの時間をじっくりと与えたことで、今年は開幕から3バックのセンターで安定感のあるプレーを披露している。10月の代表戦では負傷者が出たあとの招集だったとはいえ、代表にも初めて呼ばれ、そのまま9日のアルゼンチン戦ではスタメンに名を連ね、代表デビューした。
その落ち着きはらったプレーぶりには、ドイツメディアも驚きの声をあげていた。試合後のミックスゾーンでは、「すべてがあまりに突然のことであまり深く考える時間がなかったのが逆に良かったのかも」と振り返っていたが、今後も代表の選択肢に入るだけのアピールはしてみせた。