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元浦和監督フィンケが土台を築いた、
好調フライブルクの独自性とは。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/18 11:40
かつて矢野貴章も所属した経験のあるフライブルク。ブンデス1部の舞台で独自性を貫いている。
フィンケが築き上げたコンセプト。
土台を築きあげたのは、浦和レッズの監督を務めたこともあるフォルカー・フィンケだ。資金力ではとてもビッグクラブに対抗できない中、何を自分たちの武器とすべきかを考えに考え、ドイツ最初の育成クラブとしてのあり方を探求した。
自分たちが志向する魅力的でオフェンシブなサッカーコンセプトを入念に作り上げ、自前で時間をかけて選手を育成し、成熟した選手を他クラブに高額で売却していく。そこに、可能性を見出したのだ。
そんな“フィンケ・プラン”をベースに、さらに独自のプロジェクトをどんどん進めてきている。
フライブルクの育成アカデミーの評価はドイツでもトップレベルにあるが、ピッチ数などの施設規模でいえば、そこまで充実しているわけではない。
グラウンド数は人工芝1面に天然芝2面分とU-17、U-19、女子チームが使用するスタジアム付きのグラウンドが1面。例えば、バイエルンは総工費80億円をかけてあらゆる設備が整っている育成施設を作り出した。10面近いグラウンドを保持しているブンデスリーガクラブもある。それらと比べると、非常に小規模な施設と言える。
愚直に誠実であろうとするクラブ。
だからこそ、大切なのはやり方になる。例えば、フライブルクは現在ドイツの6つのアマチュアクラブとパートナー契約を結ぶことで、それぞれの地域におけるスカウティング、選手育成、そこからの有力選手の移籍の簡略化を可能にしている。
と同時に、こうしたやり取りが一方通行になることの弊害をしっかりと考慮し、クラブの育成指導者を現地に派遣して指導者育成を行なったり、パートナークラブの指導者の研修を受け入れたりと、相互にメリットがある関係性を大事にしている。
自分たちが強くなればそれでいいのではなく、地域全体により充実したサッカー環境を作り上げることで、結果とし全体の底上げへと導き、結果として自分たちが好選手を獲得できるチャンスを増やすというサイクルを重要視しているのだ。
フライブルクには、地方クラブとしてのコンプレックスはない。むしろそれをどう長所としてとらえるかの知恵があり、それを基にした計画を成し遂げるための継続性と我慢強さがある。成果を出すことを焦らない。
そして、クラブはいつでも誠実に選手に接する。とはいえ、損得勘定抜きには物事が進まないプロの世界であることは言うまでもない。フライブルクにしても、経済的な手段が必要なこともある。だが、このクラブはあくまでも愚直に誠実であろうとする。