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フロンターレ精神をBリーグでも。
3連覇を狙うアルバルクGMは情熱家。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byALVARK TOKYO
posted2019/10/05 08:30
Bリーグ屈指の強豪となったアルバルク東京。そのチームを恋塚氏はGMという立場で支えている。
天野春果氏の前に現れた恋塚氏。
フロンターレ時代の恋塚が随所で開拓者精神を発揮できたのは、親会社が富士通だからでもあっただろう。
「ある種の企業城下町でもある川崎とはいっても、すぐ近くには東芝やNECがあるわけです。富士通という企業自体にチャレンジャー精神が溢れていたので、子会社であるフロンターレへの口出しもすごく少なかった」
そう証言するのは、1997年のフロンターレ入社からほぼ20年間、それこそ開拓者精神を体現し続けてきた天野春果だ。そもそも天野の入社を後押しした当時の上司(富士通からの出向)が、フロンティアスピリットの持ち主だったのだろう。
「プロ化していくこれからのフロンターレには、クラブをぐいぐい引っ張っていく熱のあるヤツが必要だ」
クラブ内に存在したと後に天野が知ることになる反対論を押し切り、その上司はアメリカ(というスポーツが多くの国民の重要な人生の一部となっている国)の大学でスポーツビジネスを学んできたとはいえ、日本のプロスポーツ界では何一つ実績のない若造の天野をそれこそひょいと迎え入れた。やがてプロモーション部のトップとなる天野の前に、やはりひょいと現れたのが恋塚だった。
「アチぃってびっくりする熱量」
最初はフリーペーパーの編集者として天野を含めたフロンターレを取材する立場だった恋塚も、「いつの間にか入社していましたね(笑)」(天野)
天野に聞いてみる。話題性の高い斬新な集客プロモーション事業を1つでも実現するには、何が必要なのだろうか。
「なによりも情熱、アチぃってびっくりするくらいの熱量です。フロンターレをもっといいクラブにしていきたい。地域の皆さんからもっともっと応援してもらいたい。だから絶対にこの企画を実現させる。そのためにはどうすればいい? と燃焼し続けるような熱さがなければ前進できません」
それまで誰も手掛けようとしなかった、面白いプロモーション企画なのだから当然、乗り越えなければならない壁はそれだけ高くなる。屹立する崖を一番下から見上げるような、あるいは一番上から見下ろすような逡巡に見舞われるかもしれない。1つ乗り越えても、また次の高い壁が現れる。天野たちには十分な資金もなかった。
「断られてからが本当の勝負です。最初からイエス、イエスと続く順風満帆な企画なんて、僕らの場合はないですよ。おカネで解決するつもりは、はなからなかったですし」