バスケットボールPRESSBACK NUMBER
フロンターレ精神をBリーグでも。
3連覇を狙うアルバルクGMは情熱家。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byALVARK TOKYO
posted2019/10/05 08:30
Bリーグ屈指の強豪となったアルバルク東京。そのチームを恋塚氏はGMという立場で支えている。
「切磋琢磨できるライバルです」
企画に巻き込みたい相手にイエスと言わせる提案や抜け道を、天野とはまた違ったやり方で捻り出してくるのが恋塚だった。フロンターレがその事業で川崎の人々を驚かせ続けていた頃、恋塚の加入でプロモーション部の戦力は大きく高まっていたのだろう。恋塚の上司という立場だった天野は、敬意を滲ませながら振り返る。
「違和感がすごくあったのは“右腕”という言い方に対してでした。役職上はそうだったのかもしれないですけど、恋ちゃんには完全に任せてましたからね。別の大きな企画を任せられたから、連発できたんです。面白いプロモーションがポンポンポンって」
発想力が突拍子もなく、エネルギッシュにぐいぐい突き進んでいく天野を「あれは化け物です」と恋塚は描写する。先輩で、上司で、良きパートナーで、さらには「真剣に切磋琢磨できるライバルでした」とも。
2人の切磋琢磨は、恋塚がバスケットボール界に移ってからも、天野が自らの希望で活躍の場を東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に移した2017年4月以降も、それぞれの意識の中で続いているはずだ。
共有しているのは、フロンターレで競い合うようにして多くの困難を乗り越え、集客プロモーションという舞台裏からクラブに貢献してきた手応えであり、誇り、プライドだろう。
馬場がNBA挑戦で退団したが。
2019-20シーズンのBリーグ。アルバルクは10月5日にシーズンの初戦を戦う(新潟アルビレックスBB戦/会場は立川立飛)。
「掲げている新シーズンのスローガンは“EXCEED”。超える、という意味です。王者としての地位を守ろうとするのではなく、進化していく。常に新しい何かにチャレンジしていこうという意識は、フロンターレにいた頃から変わりません。バスケットボールの世界で3連覇を意味する“スリーピート”は本当に難しい目標なのでしょうが、チャレンジャーの気持ちを持ちながら――」
恋塚はGMとしての職務に全力を尽くすに違いない。9月半ばには中心選手だった馬場雄大がNBA挑戦を決断し、故障者も出て9人で臨まざるを得なかったFIBAアジアチャンピオンズカップはそれでも9月29日のファイナルを制し、日本勢では初めて王座に就いた。恋塚が見据えているBリーグの盟主という目標へ、また1つ大きな勝利を積み上げたのだ。
「フロンターレは、新戦力のスカウトでも集客プロモーション事業でもフロンティアスピリッツを発揮しながら、自分たちのアイデンティティを作っていくというプロセスを突き詰めて、近年の素晴らしい結果に繋げてきたのでしょう。もしかするとそうしたプロセスは、アルバルクも同じかもしれません」