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フロンターレ精神をBリーグでも。
3連覇を狙うアルバルクGMは情熱家。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byALVARK TOKYO
posted2019/10/05 08:30
Bリーグ屈指の強豪となったアルバルク東京。そのチームを恋塚氏はGMという立場で支えている。
「川崎の良さを掘り起こそうと」
「かつての川崎にはプロスポーツチームが根付かず、その意味で不毛の地というようなネガティブなイメージもついていたでしょう。けれど僕らプロモーション部の人間も、地に足をつけて、川崎の良さを掘り起こそうとしていましたし、そもそも川崎に何があるのだろうと模索・探索しながらいろいろ発掘してきた経緯があります。
本当は川崎に由来のある文化でも芸能でも何でも、とにかく知られていないものがたくさんあるはずだから、それを発掘して、フロンターレを通して世に送り出していこう。そうした出会いそのものやコラボレーションから化学反応が起こって、関わる全員が喜べる関係を作りたいと」
強化部スカウト担当の向島から学んだのは、原石を見極める目の大切さだけではない。
「今、フロンターレで新戦力のスカウトを担当している伊藤宏樹にも受け継がれていますが、いろんな高校や大学にこまめに足を運んで、コミュニケーションをきちんと取っているわけです。選手本人だったり、周囲の監督さんだったりとの」
Bリーグ立ち上げは疑問からスタート。
2014年からバスケットボールの世界に関わるようになった恋塚は、2016年に始まるBリーグの立ち上げに向けて、今度は率先して未開の地を開墾する必要に迫られた。
「疑問からのスタートでした。(Bリーグの前身であるトップリーグのNBLでも)お客さんがぜんぜん入らない。これ、何を目的にやっているのかなと」
そもそもプロスポーツが成り立つ条件とは何かさえ、分かっていない選手たちの意識改革から始めなければならなかった。
その本質はお客さんが入ってナンボという興行の世界であり、したがって集客プロモーション事業にも選手の協力が欠かせないという話もだ。関係者の意識、認識という土壌を耕していくために欠かせない“道具”が、手間暇をかける密なコミュニケーションだったのだろう。
「コミュニケーション。これが一番大事だと思います。チームの中でも、チームの外に対しても。どんな問題であったとしても、解決するための糸口はコミュニケーションにしかないと思います。ですから、相手が誰であろうと――」
恋塚はしっかり向き合おうとする。泥まみれの原石に対しても、プロスポーツ不毛と言われた地域ともしっかり向き合い、やがて中村憲剛が日本サッカー界の宝と見なされるまでになった、そして川崎と言えばフロンターレと称されるまでになるクラブで培った恋塚の開拓者精神は、アルバルクのGMとなってから、さらに強く彼自身の中に息づいているようだ。