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浦和、ACL広州戦を2-0で完勝。
危機管理の中心にいた槙野智章。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/10/03 12:00
前半にファブリシオ(中央)がミドルシュートを決めて先制。後半に関根貴大が2点目を決めて快勝した。
槙野の危機管理が流れを引き寄せた。
CKは得点チャンスだが、相手にとってもカウンターのチャンスになりかねない。そこで改めて危機管理を行った槙野の気づきや声かけが、完封勝利へと繋がる流れを引き寄せたのかもしれない。
ただ85分には、結果的にはオフサイドだったもののゴールネットを揺らされている。主審と副審が話し合ったあとに、副審の旗が挙げられた。得点になっていれば、興梠のいうように戦況は大きく変わったに違いない。
だから、敵将のカンナバーロ監督は会見で「VARでもないのに……」と納得がいかない様子だったが、それでも「今ここでいろいろ話してもしょうがない。次の試合へ向けてよい準備をするだけだ」と多くは語らなかった。
まだ前半戦が終わっただけ。
その気持ちは広州サイドだけでなく、浦和サイドも同様に抱いている。
「広州はホームになれば、別のチームになる。過去に経験しているから」と槙野は言い、柏時代に経験している鈴木も口をそろえた。
残留争いの現実は変わらない。
それでも、2-0というアドバンテージは小さくはない。アウェイで1点獲れば、3失点しても決勝へ勝ち上がれる。失点を恐れず、攻撃へ向かう余裕を持てるスコアだ。しかし、10月23日の第2戦までには清水、大分とのリーグ戦が控えている。
今季の浦和は順調に勝ち進むACLの陰で、リーグ戦、天皇杯、ルヴァンカップと国内のコンペティションでは振るわず、明暗がはっきりと分かれている。広州戦での快勝によって、すぐさまチームが変わるわけではないことは、今季の浦和を知る人間なら誰もが感じているだろう。
スコアを見るだけではわからない、90分間の小さな積み重ね。選手たちの繊細な対応が2-0と実を結んだ。その成功体験は確かな力になるはずだが、それが週末のリーグ戦でどう生きるのか? いかに活かせるのか?
自分たちを信じる力と同じくらい、もしくはそれ以上の危機感が必要なのかもしれない。残留争いを続けている現実は、まだ変わらないのだから。