サムライブルーの原材料BACK NUMBER
岡田武史の理念を実現する橋本英郎。
FC今治のJ3昇格を引っ張る40歳。
posted2019/10/03 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
FC Imabari
岡田武史オーナーは、その人を「ハッシー」と呼ぶ。
オーナーと同じ大阪有数の進学校、天王寺高出身。ガンバ大阪ユースからトップに昇格してプロになっても、勉学をおろそかにすることなく大阪市立大学経済学部を卒業したインテリのフットボーラーである。
橋本英郎、40歳。
遠藤保仁、二川孝広、明神智和とともに「黄金の中盤」を形成してガンバ大阪で多くのタイトルを手にしてきたユーティリティーの元日本代表。戦術理解度が高く、チームに応じて自分の役割を変えていけるのも彼ならではの特長と言えるかもしれない。
経験豊富なベテランは今季からJFLのFC今治でプレーする。チームの頭脳として欠かせない存在だ。
今治はJFL昇格3年目となる勝負のシーズンで2位につける。最終的に4位以内(百年構想クラブで上位2位)となれば、J3昇格を決めることができる。橋本はシーズン序盤ケガで離脱していたが、復帰以降は駒野友一とともにチームの先頭に立って引っ張っている。
「おもろない試合になってしまうかもな」
9月15日、味の素フィールド西が丘。
勝ち点4差で今治を追う東京武蔵野シティFCとのアウェーマッチは3-1で勝利した。スコアだけ見れば快勝でも、内容を見れば「我慢」を強いられた90分であった。自分たちのつなぐスタイルをやらせてもらえないなかで、どう勝利に結びつけていくのか。ここ3年間、今治に突きつけられている課題でもある。
「おもろない試合になってしまうかもな」
前半をスコアレスで終えて、橋本はボソッとつぶやいていた。
シンプルにロングボール主体でこぼれ球を回収して押し込む今治対策を、武蔵野もやってきた。最終ラインを下げられてしまうと、つなぎのスタートの位置も低くなる。こちらもある程度長いボールを使いながら、その持ち味をいつどうやって出していけばいいのかを模索していた。
「どこで落ち着けるかを探ってくれ。サッカーに11人以上はない。必ずチャンスはある。(相手が)出てきたところをしのいで空いたところをつけばチャンスになる」
ハーフタイムで語った小野剛監督の言葉に橋本は頷いた。