“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
今季1点でも金子翔太は欠かせない。
J1清水を支える右サイドの働き者。
posted2019/10/05 19:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
背後からスッと忍び寄り、ボールを奪っては味方の攻撃につなげる。チームの攻撃力を最大限に引き出すポジショニングとフリーランニング。そして、素早い攻守の切り替え。
清水エスパルスの金子翔太のプレーはまさに神出鬼没だ。さらに、そのプレーには深く組み込まれた彼の明確な意図が備わっていた。
J1第27節、清水はアウェイで湘南ベルマーレと対戦。湘南とは勝ち点差わずか1。お互いに残留に向けて絶対に負けられない一戦で、金子の効果的なプレーは6-0の大勝を引き寄せた。
25分、金子は右サイドでMF六平光成からボールを受け、DFを背負いながら縦パスを引き出し、インサイドに走りこんできた右サイドバックのエウシーニョに正確にボールを落とした。エウシーニョはそのままゴール前までボールを持ち込み、MF西澤健太とのワンツーからゴールを奪う。金子は先制点の起点となった。
さらに3-0とリードして迎えた前半アディショナルタイム。右サイドにいた金子はエンドライン深くのスペースに走り込んだMF竹内涼に針に糸を通すような鋭いスルーパスを送る。これを竹内がダイレクトで折り返し、最後は好調の西澤が豪快にゴールへ蹴り込んだ。
アシストにつながったプレス。
金子の素早い攻守の切り替えが際立ったのは5点目のシーンだ。最終ラインでボールを持った湘南CB坂圭祐に対し、背後から猛然とプレスをかけ、FWドウグラスのゴールを呼び込んだ。このプレーには明確な狙いがあったという。
「彼(坂)は運ぶのが上手い選手なので、単にボールを奪うプレスではなく、(あえて)前に運ばせるように斜めに追いかけ、わざとドリブルで運ばせて、そこをスライディングで突くことを狙ってました」
その際、金子の視線の先にはフリーになっていたドウグラスの姿が見えた。
「巻き込むように強めにボールをつつくことで、ドウグラスまで届くと思った」
体をうまくねじらせながらボールを押し出し、カットしたボールはそのままドウグラスのもとへ渡った。金子はその後も抜け目なく、すぐに起き上がってファーサイドに走り込んだ。ドウグラスのシュートは決まったものの、折り返しを受けられるポジションニング、かつシュートがGKに弾かれても最後に詰められる位置にいた。
「前半も(湘南の)菊地(俊介)選手から奪ったように、高い位置で相手からボールを奪うことは昨年からやっていたことなので、そこを出せて良かった」
まさにイメージ通りのアシスト。自身のゴールこそなかったが、攻守において抜群の存在感を放った金子は3点に絡む活躍を見せた。