JリーグPRESSBACK NUMBER
Jリーグで愛された安英学は今……。
ルーツに恩返しを続ける第二の人生。
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byYuki Suenaga
posted2019/10/07 11:40
現在は子どもから大学生まですべての年代で指導にあたっているという安英学。
管理栄養士による食育セミナー。
名門校さながらの環境が徐々に整いつつあるが、さらに驚いたのは、その強化は食の大切さを伝えるまでに至っていることだ。
横浜FC時代、スポンサーのフードサービス企業「LEOC」の管理栄養士から食の大切さについて学んだ。その経験をもとに年4回、管理栄養士による食育セミナーを選手とその保護者に向けて開いている。
「食に関しての勉強。たとえば練習が終わってすぐに補食をとることや普段の食事や水分補給の重要性などを学んでいます。それがなぜ必要で、どのように行うのかと具体的に知識をつけています。育成年代はそこで差がつく。Jリーグのアカデミーではそういうのをしっかりやっている。自分もできる限りのことはやってあげたいと思っています」
「環境」を言い訳にしない。
プロを目指す上では決して恵まれた環境ではない朝鮮学校だが、安英学は「環境」を言い訳にしてはならないと語る。
「僕も高校時代はまったく無名で、1年浪人して立正大学サッカー部に入り、そこからJリーグでプロになったんです。そして朝鮮代表としてW杯にも出られた。ほとんどゼロに近いその確率と比べたら、成し遂げられない夢ではないと思うんです」
環境が変わると選手たちの目の色も変わり始めた。
「今までは高校の試合で負けても本気で悔しがっているのは1人か2人。それが今ではみんなが悔しがる。全力でやらない選手のほうが浮く状況になりましたね」
ただ、こうしたことを形にしていくだけでも、骨の折れる作業だ。気になったのはそこにかかる費用。決して安くはない。
「自分は学校からは1円も、もらっていません。朝鮮学校は自治体から補助金がカットされ、無償化の対象外の学校です。運営は大変で、保護者たちが負担する学費もかなりかかっています。費用に関しては、僕のサッカースクールをスポンサードしてくれる人たちがいるので、そこからコーチ代やその他、付随する金額を捻出しているんです」
そう考えるとほぼ、ボランティアに近い。だが、彼にも家庭がある。自分の生活も大事だろう。