フランス・フットボール通信BACK NUMBER
クラブ改革にビラスボアス就任も、
マルセイユを包む無関心の正体。
text by
パトリック・ソウデンPatrick Sowden
photograph byNicolas Luttiau/L'Equipe
posted2019/09/12 11:00
マルセイユを指導するビラス・ボアス。酒井宏樹も在籍するフランスの名門で、指揮官は巻き返しに燃えている。
いったいどこに一貫性があるの?
方向性を見失っていることが、人々の不安を掻き立てている。
「いったいどんなビジネスモデルが望ましいのか」と、リオネル・マルテーズは疑問を投げかける。
「育成ではリヨンに大きく水をあけられ、後期育成もそれに必要なスカウティング網を持たないOMは、リールとモナコの後塵を拝している。今のOMはあらゆるものが中途半端に混じりあっている」
その半端さ加減を、あるサポーターはこう嘆いている。
「行き当たりばったりで、いったいどこに一貫性があるのか? 高いポテンシャルを持った若い選手を獲得すると言いながら、実際に交渉したのはヨーロッパでのプレー経験が一度もない29歳のダリオ・ベネデット(ボカ・ジュニオルス)だった」
とはいえスティーブ・マンダンダやディミトリ・パイエといった経験豊富なベテランの復帰は、若手への影響を考慮すれば時間の節約にもなる。ベルナール・タピの時代にも、アラン・ジレスやジャン・ティガナが台頭する若い世代に対して同じ役割を担った。ただ、現状は、期待した教育効果はどこにも表れていない。
ビラスボアスに必要な右腕の存在。
「ヨーロッパリーグを戦ったこと(2017-18シーズンに決勝進出)でリーグの表彰台を逃し、それが状況を悪化させた」とクルビスは分析する。
そこから今日に至る困難が始まった。エイローの改革が失敗に終わり、さらにゼロからの再出発を強いられるリスクは常に存在する。
「スタートから大きくつまずくようならば、誰もビラスボアスの指揮を望まなくなるし、非難はエイローに向けられる。どこにも逃げ道などない」とアロンゾは言う。
「クラブと状況をよく知るOB――強い影響力を持ち彼の右腕となれるような人物の力が今こそ必要だ。メディアやサポーターとの日常的なコミュニケーションに長け、すべてに保証を与えられる人物だ。候補者は何人もいる。私が考えるのはアビブ・ベイエやエリック・ディメコで、彼らなら申し分のない適任者だ」