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クラブ改革にビラスボアス就任も、
マルセイユを包む無関心の正体。
posted2019/09/12 11:00
text by
パトリック・ソウデンPatrick Sowden
photograph by
Nicolas Luttiau/L'Equipe
開幕戦がホームでの黒星と、オリンピック・マルセイユ(以下、OM)にとって2019-20シーズンは最悪のスタートとなった。その後、調子を上げて現在(第4節終了時)は5位のリヨンと同勝ち点の8位まで順位を上げたとはいえ、今季のOMに関しては開幕前から期待よりも不安の方が上回っていた。
名門マルセイユでいったい何が起こっているのか。少々時間は遡るが、フランス・フットボール誌7月23日発売号でパトリック・ソウデン記者が興味深い内容をレポートしている。
監修:田村修一
心配なんだ。この沈黙と無関心は。
開幕前のマルセイユの街は、奇妙な雰囲気に包まれていた。いつもであれば、期待と不安が混じりあった躁状態に街全体が覆われる。ところが今季に限っては、どこも沈黙に支配されていた。
「マルセイユの人々がOMについて語らない」のは、それだけで異常であるとジェラール・ジリ(1980年代末から90年代にかけOMの監督を3度務めた。クラブの黄金時代をよく知る人物)は言う。
「だからこそ心配なんだ。この沈黙と無関心は……」
クラブは昨シーズンに罵声を浴びた選手たちと共に新たなスタートを迎える。OMは常に新しさを求めてきたクラブであるのに、人々は現状にときめきを感じてはいない。
もちろん財政面の難しさを彼らは理解しているが、疑念を抱くのはジャックアンリ・エイロー会長が提示した「チャンピオンズプロジェクト」、いわゆる「サンチュールプロジェクト」に対してである。
エイローは、野望の実現には時間が必要であると説いた。
すなわちUEFAとの間で合意した4年後のファイナンシャル・フェアプレーの実現――チャンピオンズリーグの改革が行われる2024年までにクラブの抱える負債(2018年は8000万ユーロの赤字を計上し、今年も同等額が見込まれる)を解消するために、今は選手を売ることはあっても、戦力補強に大金を投じる余裕はない。そこは我慢すべきであると。