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日本バスケが露呈した世界との大差。
チーム力は個があって成立するが……。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byYukihito Taguchi

posted2019/09/11 19:00

日本バスケが露呈した世界との大差。チーム力は個があって成立するが……。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

大会を通じて個人の力の差を痛感したと話した渡邊雄太。この悔しさを東京オリンピックにつなげていく。

渡邊を助けられなかった。

 渡邊が1人で奮闘しながら敗戦したこの試合は、今回のワールドカップでの日本代表を象徴するような試合だった。チェコ戦で21点の活躍をした八村塁、ニュージーランド戦で31点をあげたニック・ファジーカス、そしてモンテネグロ戦の渡邊と、個として光った試合はあったが、それがチームとしての勝利につながらなかった。

 モンテネグロ戦でスターターとして出場した田中大貴は、渡邊の活躍について「試合の序盤からガンガン1対1を仕掛けて、気持ちの部分で、自分がこのチームを引っ張るんだっていうのがすごく見えました」と称賛。そのうえで、「逆に、それなら、自分たちがそれに続いてやれなかったのか……。それが、自分の今の力のなさだと思う」と、渡邊を助けられなかったことを反省した。

「アジアではうまくいっても、(ワールドカップでは)しっかり対策されたときに、上回るチーム力がなかった。個人で打開してもらうという状況じゃ、上まで行けないと思う。自分の本音ですけれど、今日だって、雄太が積極的に仕掛けて、チームを引っ張ってくれましたけれど、ああやって1人がバンと点数をとって、まわりが何もできないというときはあまりいい結果にならないというイメージがある。

 そうじゃなくて、もっといいシチュエーションでシュートを打たせてあげたいですし、その中で彼の強みというのは本当に出してもらえばいい。まだまだ、チームとしてもっとうまくバスケットボールができるのかなと思います」

点を取る意識が強すぎた?

 個とチームの話は大会を通して、何人もの選手が語っていた。ニュージーランド戦の惨敗後、比江島慎はこんなことを言っていた。

「もっとボールを動かして、動かして、ピックなどをしないと、どうしてもずれが生じないですし、相手も守りやすい。そこをどうにかしないとずるずる行ってしまうと思う。みんなが点取ろう、点取ろうという意識が強すぎるっていうのも事実であって。僕を含めて、そういった選手がもっとチームのために動くことをやっていく必要があるんじゃないかなと思います」

 比江島自身も、点を狙いに行くことで相手のディフェンスを崩す役割を担っているだけに、自戒をこめてのコメントなのだろうが、仕掛ける選手の「点を取る意識が強すぎる」から、チームでの戦いができていなかったのだろうか? バスケットボールは点を取り合うゲーム。それだけに、点を取る意識は「強すぎる」ことはない。

 もちろん、よりいい状況を選択することは必要で、チームメイトが見えていなければ問題だが、それは点を取る意識の問題ではなく、個々の視野、能力、そして判断力の問題だ。個々の選手にそれが足りないと、どうしても孤軍奮闘となる。

【次ページ】 チームプレーには「個」が必要。

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