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大迫傑、設楽悠太らを見逃すな!
金哲彦が語るMGCの魅力と見所。
posted2019/09/09 11:30
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
Kyodo News
日本中が固唾を飲んで見守る世紀の一戦、東京2020のマラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が、まもなく9月15日に開催される。
「MGCの応援に九州からわざわざ来る友人たちが何人もいる」と、知己の市民ランナーが教えてくれた。また、箱根駅伝ばりの観戦ムックや選手名鑑が本屋に並んでいる。かつて、ここまで注目されたマラソンレースがあっただろうか?
オリンピックの東京開催が6年前に決まり、競技団体はメダル獲得のため競技レベルを上げる強化策を練ってきた。なかでも「マラソンの日本記録更新に1億円の報奨金」というキャンペーンは、起死回生のヒットだった。奇策ではあったが、結果的にマラソンの注目度を上げると同時に、低迷していた男子マラソンのレベルを一気に押し上げたのである。
MGCはその延長線上にあるファイナルイベントであると同時に、次の2点において注目に値する。
1)直接対決してこなかったトップランナーたちが一堂に会し、ガチンコ勝負すること。
2)その場でオリンピック代表が決定すること(2名)。
当日はNHKで女子の解説を担当することになっているので、出場選手個人についてのコメントは、あえてここでは書かない。その代わりと言ってはなんだが、レースにおいて勝敗の鍵を握ると思われるポイントを挙げておきたい。
男子は4強が中心、ペースは遅め?
MGCは、男子31名、女子12名のごく少人数の参加者だけで行われる。また、現在は常識となった前半のレースを引っ張るペースメーカーがいない。したがって、スタート直後は各選手がお互いの様子を窺いながら、横に広がる可能性が高い。
優勝することや好タイムを出すことが目的ではなく、あくまで2位以内、少なくとも3位以内に入らなければ意味のないレースになってしまうという特殊条件である。
男子は4強と言われている大迫傑、設楽悠太、井上大仁、服部勇馬の力が抜けている。4人はそれぞれの動きや表情を窺いながらレースをするだろうし、それ以外の選手たちも4人の動きを逐一知りたいはずだ。つまり、4人がスタート直後集団の後方に位置した場合、ペースが極端に遅くなる可能性がある。
4強にとっては1km3分15秒を超えるようなスローな展開が続くのはありがたくない。ある程度のスピードでの練習を積んできているはずなので、それ以下で走り続けると疲れてしまう。対応力があったとしてもストレスがかかるものなのだ。そうなると性格的には設楽や井上が仕掛けていくかもしれない。