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大迫傑、設楽悠太らを見逃すな!
金哲彦が語るMGCの魅力と見所。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byKyodo News
posted2019/09/09 11:30
大迫や設楽らの真剣勝負が繰り広げられるMGC。誰が東京五輪代表の座を勝ち取るか。
追い上げパターンは通用しない。
そしてもう1つは、本命に名前が上がっていない選手がスタートから数kmの下り坂にかかる地点から単独で飛び出していく可能性だ。
2008年北京五輪の女子マラソンでコンスタンティナ・ディタ・トメスク(ルーマニア)が1人で集団から抜け出し、独走優勝した。伏兵であったのをいいことに、いつか落ちてくるだろうという後続の思惑を裏切って逃げ切った。
それと同じように、うしろがついてこないことを狙うというのも選択肢だろう。かく乱戦法なので勇気もいるし、ストレスもかかるが、終盤のペースチェンジが苦手な選手は、むしろその方が勝機がある。
ただし、今回は飛び出した選手をそのままにしておくことは考えにくい。集団から誰かが追いかけ始めて、必ず追随することになる。2位以内を狙うということは、一度集団から離れて後半になってから追い上げる(川内優輝選手が時々そんなレース展開をやる)「追い上げパターン」は通用しないからだ。
本命不在の女子は自転車レース状態に?
女子は男子の4強のような絶対的存在がいない。また、トレーニングの段階から男子コーチにペースメークをしてもらっているので、自分たちでペースを作ることに慣れていない。スタート直後はジョギングのようなゆっくりとした展開になるかもしれない。
ひとつ気になっているのは、女子の場合ワコール、天満屋、ダイハツ、日本郵政の4チームで複数選手がエントリーしていることだ。
ペースがあまりに遅くなってしまうと、たとえば、スピードランナーの鈴木亜由子などは走りのリズムを崩してしまうことがある。そんな望ましくない状況を回避するため、同じチームの選手が2~3km交代でレースを引っ張り、風よけを交代で行う自転車レースのような形を作る可能性もあるだろう。