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今も現役! 谷川真理が語る
「走るとは人生を充実させること」

posted2019/09/11 11:00

 
今も現役! 谷川真理が語る「走るとは人生を充実させること」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph by

Yuki Suenaga

 谷川真理がその競技人生でオリンピックの舞台に立つことはなかった。それでも多くの人の記憶に残り、今も市民ランナーにリスペクトされ、愛され続けているのは、成績だけではない、走ることの楽しみを彼女が知っているからかもしれない。

 中学、高校と陸上部に所属をしていましたが、一度はOLとして働いていたんです。職場は読売新聞社の隣の東京サンケイビルでした。

 24歳の春に会社の同僚がお弁当を持って、皇居でお花見をしながらランチしようよって誘ってきたんです。その時、皇居をたくさんの人が走っていて、じゃあ私も明日から走ってみようかなと思ったのが、マラソンを走るきっかけになりました。

 それから4年後に、バルセロナオリンピックの補欠に選んでいただいたんです。もしこれでオリンピックに行けたら、シンデレラストーリーみたいだな~って気持ちでした。実は当時、ウインドサーフィンもやりたくて、もしオリンピックに出られたら、ここで辞めてもいいかなって少し思っていたんです。だってマラソンの練習って本当に過酷だし、自分と向き合う時間も長いのできついじゃないですか。だからオリンピックに出て、いきなり辞めて違う世界に行くというのもありかなって(笑)。

「私は、今も一応現役です」

 結局その4年後のアトランタオリンピックにも行けなくて、その時は本当に今度こそ引退しようと思っていました。

 だけど、引退ってなんだろうなって考えるきっかけがあったんです。最終選考会だった名古屋国際マラソンで日本代表入りを逃して、その翌週に同じ名古屋で行われた市民マラソン大会にゲストランナーとして呼ばれていたんです。良い結果も出せなくて、どんな顔をして現場に行けばいいのかと悩んだのですが、いざ大会に行ったらたくさんの方が「真理ちゃん、これからも一緒に走って行こうね」と温かい声をかけてくださったんです。

 あぁそうだよね、走ることが好きなら、引退って言わなくていいし、市民ランナーとして走り始めた頃の自分に戻ればいいだけじゃんって思えました。

 これはオリンピックに行かなかったからこそですよね。日本代表として注目をされて、成績を残した選手だと、結果が悪いと「もうダメだ」とかいろいろ叩かれたりするじゃないですか。そういう選手は引退宣言をして線引きをする必要もあると思うのですが、私の場合はそうじゃないので(笑)。

 だから私は、今も一応現役です。もちろんレベルは下がっていますけど、走ることができるという意味では今でも現役なんです。

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