“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
吉田麻也、昌子源だけじゃない。
植田直通に芽生えたリーダーの自覚。
posted2019/09/07 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Kiichi Matsumoto
表情が柔らかくなった。
キリンチャレンジカップのパラグアイ戦後のミックスゾーン。久しぶりに植田直通を取材して受けた印象だ。
植田は右CBとして後半の45分間をきっちりとプレーし、2-0の完封勝利に貢献した。
振り返ると植田との出会いは彼が大津高校に入学したころだ。最初は寡黙な男だと思っていたが、取材を重ねるごとに素直に思いを口にしてくれる好青年だと感じるようになった。少しシャイだが、愛すべきキャラクターであった。
だが、高校選手権や年代別代表、そして鹿島アントラーズに入団するにつれて、試合後のミックスゾーンで会話をした植田の表情は、こわばり、なにやら構えているように感じた。それはA代表に選出されてからも同じだった。オープンではなかったと言うべきか、来るものに対し、未然に跳ね返していた印象だった。
しかしこの日は、質問を一度受け止めて、そこからしっかりと噛み締めて返答する余裕があったように思う。
この変化を彼に伝えると、柔らかい笑みを浮かべてこう語った。
「海外に行ったからかもしれないですね。日本にいたままでは分からなかったと思う」
ベルギーで求められた「変化」。
植田は2018年7月、5年半在籍した鹿島からベルギー1部リーグのセルクル・ブルージュへ移籍した。今季は開幕戦からCBとしてスタメンフル出場をするなど、守備の要として活躍している。
だが現在、チームはリーグ第6節終了時点で1勝5敗と大きく負け越している。苦しい状況の中で彼は「変化」を求められていた。
「どれだけ日本がやりやすかったかを痛感しています。言葉もそうだけど、日本人選手は言うことをしっかりと聞いてくれる。でもベルギーリーグは『自分が、自分が』で、自分がステップアップしてやるという欲望が強い選手が多い。それがいい方向に出るときもあれば、悪い方向に出るときもある。
そういう選手たちを束ねる難しさを日々感じていて、CBの重要性を改めて実感しています。もっともっとチームのためにやらなきゃいけないのに、それをチームに伝えきれていない自分に今、むしゃくしゃしています」