ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
大久保からの喝と麻也の期待を胸に。
橋本拳人はハイブリッドMFに変身中。
posted2019/09/09 12:15
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Takuya Sugiyama
先発11人中、10人が欧州で戦う選手たち。ただ1人、Jリーグ組としてピッチに立った橋本拳人が堂々たるプレーを見せた。
9月5日に茨城・カシマスタジアムで行われた、日本対パラグアイの一戦。スタメンは今冬のアジアカップで主力だった選手たち。唯一、ダブルボランチの位置には、柴崎岳の相棒として初めて橋本が入った。今年3月に代表デビューを果たしたばかり。3月、6月の招集時に安定したプレーを示し、継続して今回も選ばれた。
現在、J1リーグで首位を快走するFC東京の中心選手。球際での強度の高い守備とボール奪取、そこからのパス配給で好調のチームを常に下支えする。10代の頃は攻撃的MFでプレーしていたが、ここまでプロの世界では守備に長けたボランチだった。本人も一番の武器は「ボール奪取力」と疑わない。中盤で相手に襲いかかる“狩人”だ。
ただ、そこからのパス出しには大きな課題があることは、自他ともに認めるところだった。
大久保嘉人からの「前だよ!」
2017年のことだった。そのシーズン、川崎FからFC東京に移籍してきた大久保嘉人は、チームの稚拙なパスワークに常に異を唱えていた。
「もっとリズムよく回さないと!」
そんな声が練習中から頻繁に聞こえてきた。特に多くの注文をつけられていたのが、橋本だった。ボランチの位置からリズムよく縦方向にパスが出てくるか否か。それは攻撃の生命線の1つでもある。相手のプレッシャーを受けると、横方向や後方へのパスを繰り返す橋本に、大久保は「ケント! 前だよ!」「何度言ったらわかるんだよ!」と叱咤を続けた。
悔しそうな表情をしながらも、うまく前にパスをつなげられない自分がいたのも事実。そこからチームの練習後も、コーチや味方につきあってもらいながら、ボールを受けては前にターン、さらには敵に寄せられてもうまく回避して前にパスを配るプレーを繰り返していく。