話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ガンバ大阪が陥ったネガティブの罠。
宮本恒靖監督は率先して変われるか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2019/09/04 08:00
宮本恒靖監督はガンバ大阪にとって重要な人物である。それだけに苦悩も深いのだろう。
管理と個性という永遠の課題。
宮本監督のスタイルは、練習で個々の仕事を徹底させ、試合で完遂させることが勝利に繋がるというロジックだ。それ自体が間違いとは言えないが、完璧を求めて言い過ぎると選手は硬くなる。
「ミスができない」と考えれば安パイなプレーが増え、アグレッシブさを失ってしまう。しかも結果が出ていないので、選手はこのままでいいのか不安になっている。
ならば一度、選手を“放牧”してはどうだろうか。
ガンバの選手は、個の能力が高く、自由な発想でプレーするタイプが多い。そのため、伸び伸びやらせた方が個々の特徴を出しやすく、それがパワーになっていく。西野朗時代はまさにそうだった。
ただ宮本監督は現役時代、その西野監督のやり方に異議を唱えたことがあるので、ある程度、自分が管理する中でという考えなのだろう。
宮本監督は愚痴も文句も吐き出さない。
参考になるチームがある。
東京ヴェルディは、永井秀樹監督がシーズン途中で就任したが、選手が伸び伸びプレーして、とてもいいムードだ。ヴェルディユース上がりの若い選手を登用し、彼らが自由にプレーした方がチームとして機能すると理解しているからだ。
チームにいる選手の特性とそれを活かすためにどうすればいいのか、チーム全体が見えているからこその判断だろう。
マリノス戦後、宮本監督は終始険しい表情で、言葉も少なかった。
思い詰めた表情には愚痴も文句も吐き出さない覚悟が見て取れたが、一方で余裕のなさが気にかかる。選手時代から責任感が強く、基本的になんでも自分でやってしまうし、できてしまう。それだけにすべてを自分で抱えてしまいがちだ。
そうして選手時代、日本代表のキャプテンとしてドイツW杯で苦しんだ。監督になっても、そこは変わっていないようだ。