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アザールがまだ原石だった17歳。
恩師が惚れたドリブルの才と知性。
text by
サビエ・バレXavier Barret
photograph byGetty Images
posted2019/09/01 15:00
リール時代、若きアザールは2008-09、2009-10シーズンと2年連続でリーグ・アン最優秀若手賞を受賞した。
チェルシーを離れるいい潮時だった。
――ではアザールは、どうやって成功を手にしたのでしょうか?
「彼が賢かったのは、リールが2011年にリーグとカップのダブルタイトルを達成した後も、多くのオファーを受けながらクラブに残ったことだった。もう1年リールでプレーすることを彼は選択し、それが大きな進歩をもたらした」
――ダブルの後では残留を説得するのは難しかったのでは?
「エデンの場合、周囲を取り巻く環境が素晴らしかった。家族はベルギーにいて、リールから遠くない。私は家族も当時の代理人も良く知っていた。
彼がもう1年リールに残ると決めたのは、周囲のアドバイスを聞きながら彼自身が決断したことだった。誰も彼に対して、今が売り時だから絶対に移籍すべきだとは言わなかった。エデンもスポーツ面こそが重要で、金は後からついてくることをよく理解していた」
――近年のチェルシーでは、彼は望まれたときにしかプレーしていない印象を受けました。リールでも“試合を選んでいた”のでしょうか?
「繰り返すが彼はコンペティターだ。常にチャレンジを求め、レアル・マドリーでプレーしたいという夢を抱いていた。今がチェルシーを離れるいい潮時だったと思う。チェルシーではいいときも悪いときもあったし、28歳でレアルに入団するのはもの凄く大きな刺激になる。
私が思うにこれから彼は最盛期を迎える。そのためのすべてを彼は備えているし、大きな足跡をレアルに残すだろう」
ジダンであれば敬意を抱いて……。
――アザールのようなタイプにとって、名選手だったジダンの言葉のほうが、選手の経歴がほとんどないジョゼ・モウリーニョの言葉よりも頭に入りやすいのでしょうか?
「選手として見るべきキャリアはないが、モウリーニョが偉大な監督であるのは間違いない。名選手ではなかった監督でも、選手との間に素晴らしい関係を築くことはできる。コミュニケーション能力に長けた監督ならば、優れた選手との関係でも他との違いを作り出せる。
とはいえジダンのような監督であれば、選手も敬意を抱いて両者は同じ言葉で話をする。リール時代のエデンにジダンが何を言ったか私はよく覚えている(当時レアル・マドリーのスタッフだったジダンが『いますぐマドリーに連れて帰りたい』という趣旨の発言をしたと言われている)。
『ちょっと待て。額面通りに受け取らないほうがいい』と思った。変に勘違いすることなく、地道に努力することこそが一番大事だと考えていたからだ」