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アザールがまだ原石だった17歳。
恩師が惚れたドリブルの才と知性。
posted2019/09/01 15:00
text by
サビエ・バレXavier Barret
photograph by
Getty Images
ルディ・ガルシアがル・マンを去ってリールの監督に就任したのは2008年のことだった。その3年後には、リーグとカップのダブルを達成する。リールでの最初のシーズンに、話題にのぼり始めたのが17歳の若きアタッカーだった。
その若者――エデン・アザールは、前任者クロード・ピュエルのもとではわずか4試合しかプレーした経験がなかった。ガルシアは違った。彼はアザールにできる限りの機会を与えて、原石に磨きをかけようとした。ザビエ・バレ記者のインタビューで、当時の様子をガルシアが振り返る。(監修:田村修一)
傑出した対人能力とドリブルの意志。
――あなたがリールに赴任した2008年に、エデン・アザールのことを何か知っていましたか?
「ほとんど何も知らなかった。知っていたのはリールにとって厳しかったシーズン(7位で終了)に、何度か出場したことがあるということだけだった。かつてのチームメイトだったジャン・ミシェル・バンダムとリールで再会し、育成センターのディレクターを務めていたバンダムに、プレシーズン合宿に参加すべき選手たちのリスト作成を依頼した。
ケガや不測の事態で参加できない選手が必ず何人かいるから、若手も何人か呼ぶことに決めた。ジャン・ミシェルが推薦した5人の若手の中に、ヤニス・サリブル(現マジョルカ)とともにアザールが入っていたんだ。そのころから彼は才能の面では突出していた。最初からそんな感じだった。だから私は彼ら若手を練習の初日からルシン(以前のリールの本拠地)に呼んで、プレシーズン合宿にも連れて行った」
――アザールのどんなところに注目しましたか?
「まず目についたのが対人能力の高さとドリブルへの意志だった。1対1の能力は傑出していた。ドリブルばかりしたがる傾向があったが、17歳という年齢を考えれば理解はできる。練習で彼がベテランたちをチンチンにすると、興奮した彼の気を静めるのがひと苦労だった」