オリンピックへの道BACK NUMBER
“世界”と縁遠かった入江ゆきの逆襲。
攻めきるレスリングで掴む東京五輪。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/09/01 11:40
逆転負けを喫し続けた須崎優衣(左)に、今年7月プレーオフで勝利した入江ゆき。世界選手権でメダルを獲得すれば、五輪代表内定となる。
登坂絵莉の次は、須崎優衣が。
リオ五輪が終わり、巻き返す機会が再び訪れる。リオ五輪を目指していた入江には「今度こそ」という思いがあっただろう。だが、'17年、'18年世界選手権代表を立て続け逃すことになった。
新たに壁となったのは、須崎優衣だった。'17年、'18年と世界選手権を連覇し、一気にこの階級の第一人者となったのだ。
入江にチャンスがなかったわけではない。'18年の世界選手権代表は、規定により、須崎と入江のプレーオフの結果で決まることになっていた。だが大事な試合でリードしながら、試合終了15秒前に逆転負けを喫した。しかも第1ピリオドで4−0と勝利に近づきながらの、敗北だった。
このとき、入江はこう反省の弁を口にした。
「もっと自分から攻めていけたら……。自分が弱かったです」
攻めていく姿勢を忘れないことが大切と知りつつ、身体の反応は異なった。
どこか勝ちきれない姿に、日本の上位に常にいつつ、入江は1番手になれない、そんな目も向けられるようになった。
「最後まで攻めきる」姿勢。
迎えた今年の世界選手権代表争い。選考対象の昨年末の全日本選手権で優勝して優位に立ち、今年6月の全日本選抜選手権でも優勝すれば、自動的に代表に決まることになっていた。
ところがこの大会での須崎との一戦で、終了2秒前に逆転負けを喫する。
前戦と、いわば、同じ展開だった。「ここまでの選手か」。そんな声も聞かれた。
だが、そうではなかった。代表の座を決する須崎とのプレーオフで、入江は見違えるような動きを見せ、6−1で勝利。ついに、世界選手権代表をつかんだのだ。
過去の失敗を、「守りに入ってしまったこと」と分析。「最後まで攻めきる」という決意でマットに上がり、実践した結果だった。