酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
菅野智之、10勝到達も内容はどうか。
「好投」指標で各エースを比較する。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/08/26 12:00
7年間で6度目となる2ケタ勝利をマークした菅野智之。らしくない内容が続いても、巨人に勝利をもたらしている。
今年は打線が菅野を盛り立てている。
菅野智之は、味方の援護点に成績を左右されやすい投手である。2015、2016年ともに投球内容だけなら沢村賞を取ってもおかしくなかった。しかし好投しても味方の援護がなく、勝ち星につながらなかったのだ。ここ2年は援護点が増えて、ようやく実力に勝ち星が追いついてきた。
一方、今年は不振の菅野を打線が援護している。菅野としてみれば不本意だろうが、今年に限ればエースをチームが盛り立てているのだ。
こういった運・不運は、どのチームの投手にも存在する。
昨年のパ投手たちはどうなる?
この数値で昨年の両リーグの規定投球回数以上の投手を防御率順に見てみると、以下のようになる。
<2018年パ・リーグ>
1.岸孝之(楽)
11勝4敗(10勝7敗)防御率2.72
2.菊池雄星(西)
14勝4敗(10勝7敗)防御率3.08
3.上沢直之(日)
11勝6敗(15勝7敗)防御率3.16
4.マルティネス(日)
10勝11敗(9勝7敗)防御率3.51
5.西勇輝(オ)
10勝13敗(10勝10敗)防御率3.60
6.則本昂大(楽)
10勝11敗(12勝11敗)防御率3.69
7.涌井秀章(ロ)
7勝9敗(8勝7敗)防御率3.70
8.多和田真三郎(西)
16勝5敗(9勝12敗)防御率3.81
9.山岡泰輔(オ)
7勝12敗(3勝10敗)防御率3.95
HQS数で見れば、防御率3位の上沢が“最多勝”になる。昨年の上沢は自責点8、自責点9と大量失点した試合があり、そのためにトータルの防御率はよくないが最も優秀な先発投手だったといえよう。
対照的に最多勝の多和田はHQS数で見れば9勝どまり。強力打線の援護で勝った試合が多かった。厳しい見方をすれば実力とは言えなかった。今季の不振がそれを裏付けているといえるかもしれない。
山岡は7勝したが、HQS数で見れば3勝。投球内容からみればそれでも打線の恩恵を受けていたことがわかる。