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小笠原満男が子供達に伝える自立心。
「荷物ぐちゃぐちゃでもいいんだよ」
text by

池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/08/15 11:40

これまでキャリアで得たことを子どもたちに還元する小笠原満男。サッカーの指導を通じて自立の重要性を伝えていく。
「あ、自分で準備をしてきたな」
荷物の準備も然り。必要と思うなら持っていけばいいし、いらないなら持っていかないという選択を自ら行う。アントラーズアカデミーでは、スクールからユースまで、年間で数多くの遠征を実施している。海外遠征だけで直近3年で32回。カテゴリーに関係なく、国内外を行ったり来たりする日々だ。
「リーグ戦、ACL、クラブW杯、日本代表戦、W杯。これまで何度も遠征に行ったけど、パンツを何枚持っていくのか、靴下を何足持っていくのか。そんなの決まりはない。朝、起きられなければ目覚まし時計を持っていく。天気予報を見て、雨が降りそうだったら、多めに着るものを持っていく。寒そうだったら何を持っていかないといけないのか。上質な睡眠のためにマットレスを持っていく選手もいる。俺は持っていったことがないけど、それも自分次第。自分に必要なものは何かを考えて、準備を進めていくもの」
遠征のとき、子どもたちの荷物を見ればすぐに分かるという。
「きっちり親にやってもらったなっていう子もいれば、ぐちゃぐちゃだけど、“あ、自分で準備をしてきたな”っていう子もいる。忘れ物をしたっていいんだよ。自分でできるようになるのが正解なんだから」
「親離れ、子離れしないといけない」
能動的に行動することは、成功または失敗に向けたスタートラインに立つことを意味する。まず挑戦しなければ、成功も失敗もない。挑戦なしには成長もない。だからこそ、親が口出ししないでほしいと願う。
「“水筒の中身はちゃんと入ってる?”。出発の際によく聞く言葉だけど、それは自分でやらせてほしい。“親が過保護だと、子どももダメになりますよ”っていうのは強く言いたい。失敗をしても、忘れ物をしても、本人の成長のためだと思って。
子どもは親離れしないといけないし、親も子離れしないといけない。親がベタベタして、何かを渡したりとかしているのを見ると、俺は『離れろ』と言いたくなってしまうんです。子どもがかわいいというのは、気持ちとしてよく分かるんだけどさ。俺自身、子を持つ親として」