球道雑記BACK NUMBER
データ采配が光った大学侍ジャパン。
米国監督は「球数と休養」を懸念。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/08/02 17:30
日米大学野球で3大会ぶりの優勝を果たした日本大学代表。データを駆使した継投や打撃で金の卵たちが揃う米国代表を退けた。
「金の卵」を守るガイドライン。
マクドネル監督は、前述の言葉を補足するようにこうも続けた。
「アメリカの大学野球はシーズンが長いです。約4カ月続けます。毎週末、試合を続けていくわけですが、アメリカの先発投手は週に1回しか投げません。中6日で進めて行きます。もちろん(チームが勝つためには)もう少し投げられたら良いんですけど、今回(日米大学野球に)来てくれている選手達は、来年のドラフトを控える金の卵です。将来的に彼らはメジャーで大きくなる選手。だからこういう使い方になります」
目の前の勝利は大切だが、それ以上に選手達の未来を案じる。マクドネル監督の強いポリシーが感じられた。
アメリカには2014年にMLBと全米野球協会が規定した投球に関するガイドライン「Pitch Smart」に準ずる考えがある。
「Pitch Smart」とは、未来ある少年や若い投手の肩や肘などの損傷をなくそうと、医師や専門家たちが意見を交わし、作られたガイドラインのこと。8歳以下から22歳の年代ごとに、球数の上限、投球数に対して必要とされる休養日、さらには年間で最終登板から最低これくらいは実戦登板をしてはいけないなど、様々な取り決めが書かれている。
「彼らの安全と将来が一番」
マクドネル監督は今回の日米大学野球でも第1戦から第5戦まで、先発をそれぞれ別々の投手に任せるなど、選手の負担を極力、最小限にとどめようと考えた。1度先発した投手については基本的に複数回の登板を避けてきたのもそのためだ。
唯一の例外は第1戦で中継ぎの3番手として登板したダグ・ニカイジーだけだが、彼とて第1戦の登板時2/3イニング、18球という少ない球数から、中4日の休養を挟んで、第5戦の先発に臨んでいる。前述の「Pitch Smart」に照らし合わせても、この登板間隔には何の違和感もないし、ここにマクドネル監督と米球界に関わる者達の強い意思が窺える。
同監督が言う。
「今回選ばれたピッチャーも、またいつか私が監督をするときもそうですけど、代表チームで監督をするということは、彼らが(所属する)それぞれの大学から信頼をしてもらって預かっているということです。ですから起用法を変えるわけにはいきません。まずは彼らの安全、彼らの将来が一番になります」
この言葉については、我々書く側の人間も含め深く受け止める必要がある。これはマクドネル監督の置き土産のようにも感じた。