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上田綺世の鹿島加入が示すこと。
部活が強い日本サッカー界の変化。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byKyodo News

posted2019/07/29 18:00

上田綺世の鹿島加入が示すこと。部活が強い日本サッカー界の変化。<Number Web> photograph by Kyodo News

鹿島は、次々と若い才能が世界へ巣立っていくクラブになった。上田綺世もその系譜に名を連ねようとしている。

上田も海外でのプレーが目標。

 上田も、海外でのプレーを目標においている。半年後、1年後に海外へ送り出す可能性さえある。鹿島サイドもそういう事態が起こりうることは理解している。鈴木強化部長は上田との契約について、「詳細は話せないけれど、海外へ出るための契約ではない」と話す。鹿島は海外移籍しやすいクラブと思われるかもしれないが、移籍金という対価は得ている。

 海外移籍を希望する選手たちは、契約時にその想いを告げる。移籍時の違約金の設定には、国内移籍と海外移籍とで金額に違いを設けるのも昨今では、当然のこととなった。そして移籍時にも、その後の選手の活躍次第で、移籍元のクラブ側が収入が得られるといった、欧州では当たり前の契約を交わすケースもある。

 今夏、海外へ移籍した選手たちの年齢はみな若い。「23歳の夏がラストチャンス」と語った鈴木優磨のように、選手の意識も変わり、それに応じたオファーが届く。とはいえ、いきなりビッグクラブへ移籍できず、欧州でのステップアップを目指すなら、23歳でも遅すぎるのかもしれない。

 Jリーグでは30代でもプレーする選手が多いし、選手として脂が乗るのは20代後半という見方もあるが、欧州のマーケットでは事情が違う。欧州での実績がなければ、20代後半での移籍は難しいものになる。

日本サッカー界も変わる必要がある。

 小池裕太は流通経済大学4年夏に大学サッカー部を退部し、ベルギーのシント・トロイデンへ加入したものの、出場機会がなく、1年を待たず、今季鹿島にレンタル移籍し、プロとしての経験を積んでいる。アマチュアとプロとでは背負うプレッシャーも違う。現在の小池にとっては、母国でプレーすることが最適な環境だったのだろう。

 選手としてのキャリアに、約束されたルートは存在しない。それでも、選手たちにとって、欧州でのプレーが単なる夢ではなく、明確な目標として現実味を持つようになったからこそ、日本サッカー界も変わっていく必要がある。

 成長に応じ、環境を整える。今回の法政大学の決断のような“柔軟な移籍”が増えることで、それは可能になるはずだ。

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