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上田綺世の鹿島加入が示すこと。
部活が強い日本サッカー界の変化。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byKyodo News

posted2019/07/29 18:00

上田綺世の鹿島加入が示すこと。部活が強い日本サッカー界の変化。<Number Web> photograph by Kyodo News

鹿島は、次々と若い才能が世界へ巣立っていくクラブになった。上田綺世もその系譜に名を連ねようとしている。

プロ入りは絶好のタイミングだった。

 2年半前には、実現できなかったプロとしての一歩を踏み出すことになった上田は、「自分のサッカー人生のなかで一番大事な2年半だった」と法政大での日々を振り返っている。

 選手が伸びる時期は、人それぞれだ。背が高くなる時期といった個人的な要因だけでなく、指導者やチームメイトとの出会いなど外的な要因も影響する。仮に高校卒業時に上田がプロ入りしていたとしても、現在のような成長を遂げていたという保証はない。大学へ進学し、試合の経験を積みながら、研鑽した結果が彼を進化させたのだろう。

「ジュニアユースからユースへ昇格はできなかったけれど、鹿島学園、法政大学で鍛えてもらった上田選手が鹿島へ帰ってきてくれた」と鈴木強化部長は目を細めた。

 コパ・アメリカで得点こそなかったものの、南米のA代表相手に可能性を見せつけた上田にとって、その直後でのプロ入りは、絶好のタイミングだった。

「代表での活動を経験しながら、刺激を受けた」ことが、プロ入りへの欲を高めたと話す上田。「刺激」は、国際試合という舞台からだけでなく、すでにプロでプレーしている同世代のチームメイトの姿から受けたであろうことは想像に難くない。

「大学サッカーをやめて、とは言えない」

 過去にも上田のように大学サッカー部に所属しながら、世代別の代表に参加した選手はいる。ただ、上田と同じ想いを抱いたとしても、プロ転向は、容易ではないのも事実だ。たとえば推薦入学など、各選手個別の事情もある。「(2年生での)内定時にすぐさまプロ入りを打診しなかったのか?」と鈴木強化部長に訊ねたところ、「うちから大学のサッカー部をやめて、ということは言えない」と答えた。今回のプロ入りも上田の希望から端を発し、大学内部での了承を経て実現されている。

 欧州サッカー界では、年齢に関係なく、選手の成長に応じた環境でプレーができる。リーグやクラブによって、レベルの格差があるため、選択肢も多い。ポテンシャルを評価されれば、10代後半でトップレベルのチームでのプレーも可能だ。

 しかし、学校の部活動が盛んな日本では、選手が自身の成長に応じた環境を選ぶことは難しい。クラブの下部組織であっても、中学生が高校生の試合に出るケースはわずかだろう。年齢に縛られることで、本来であれば早くから開花するはずの才能が、見いだされるのが遅れたり、日の目を見なかったりする危険性は残る。

【次ページ】 海外クラブとの獲得競争にも“効力”が?

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