“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
守護神になれなかった男のJデビュー。
FC琉球のGK猪瀬康介、不屈の魂。
posted2019/07/30 19:55
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
7月21日のJ2リーグ第23節・水戸ホーリーホックvs.FC琉球の一戦。流経大柏から今季加入した高卒ルーキーである琉球のGK猪瀬康介が、プロデビューを先発フル出場で飾った。
実はこのデビュー戦、リーグ方式の公式戦としては、2018年7月15日のプレミアリーグEAST第9節以来というものだった。決して彼が昨年、怪我をして離脱していたわけではない。彼は高2まで第3GKで、高3に上がると新入生の1年生GKにレギュラーの座を奪われ、最後まで第2GKだったのだ。
前述したプレミアリーグEASTでの試合(vs.鹿島ユース)では、その1年生GKが負傷離脱したために出番が回ってきたに過ぎず、そのGKが復帰した次節以降は再びベンチを温め続け、最後の全国高校選手権では準優勝こそ経験したが、ピッチに立ったのは準決勝の1試合だけだった。
だが、高校生活でレギュラーを一度も掴めなかった男が、全ての高卒GKの中の先陣を切ってJデビューを果たしたのだ。
ビルドアップのプレーで魅せる。
結果は首位争いを演じる水戸に1-3で敗れてしまったが、彼は得意のビルドアップへの関与やキックでカウンターの起点になるなど、臆する事なく最後までプレーをやりきった。
「水戸戦の前の週に正GKのダニー(・カルバハル)が怪我で出られないと分かったので。水戸からレンタル移籍をしている石井綾さんも(対戦相手が水戸なので)契約上出られないので、僕しかないと思ってトレーニングに打ち込んでいました。
6月の金沢戦から京都、甲府戦でもダニーが怪我で離脱して、僕がベンチ入りしたので、次は僕にチャンスが来るんじゃないかと思ってました。
琉球は後ろから繋ぐサッカーをするので、とにかくボールに関わることと、失点をしない。それを頭に入れて、いつもより頭の回転を速くするつもりでやりました」