球体とリズムBACK NUMBER
現地記者「長年バルサにいるみたい」
ハンサムで強心臓の司令塔デヨング。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/25 18:00
メッシ、スアレスの決定力が圧倒的な一方で、中盤の構成力に陰りを見せるバルサ。デヨングはその状況に風穴を開けるか。
試運転でもバルサに適応する実力。
そんな長いシーズンを過ごしたデヨングにとって、この日のチェルシー戦がバルセロナでのデビュー戦に。記念すべき瞬間に、欧州フットボールに詳しい日本のファンが沸いた。
「ファンにすごく温かく迎えてもらって嬉しかった」とデヨングは試合後に話した。いつも通り、にこやかな甘いルックスでメディアに対応。「プレシーズンなので、全力は出せなかった。今、いろいろと試しているところだしね」と続けたように、試運転のような後半45分間のパフォーマンスだった(チェルシーのロス・バークリーが加点し、バルセロナのイバン・ラキティッチが1点を返して、試合は2-1で終了)。
それでも、あるスペイン人記者は「君はすでに、バルセロナで長年プレーしているかのようだった」と言う。
「君はプレッシャーを感じないのかな?」とその記者に訊かれると、「感じない。フットボールはどこでプレーしてもフットボールだからね。ピッチに入ったら、選手はクオリティを示さなければならない。それはどこででも同じさ」とデヨングは説明した。
低い位置で相手の逆を取るフェイント。
生粋のアヤックス育ちではない。18歳まで過ごしたビレムIIでは、コーチのアドバイスをただ鵜呑みにするのではなく、少年時代から自ら考え、違うと思った指導に従うことはなかったという。
だからこそ、あの特別なプレースタイルが形成されていったのだろう。低い位置でもフェイントを使って相手の逆を取り、自らのマークを解いてから局面を動かす。リスキーではあるが、そんな司令塔がいれば、チームは早い段階から数的有利になれる。
アヤックスもバルセロナも、故ヨハン・クライフの「ボールは疲れないから、パスをつなげ」との教えがベースにある。そこにハイレベルな異質の個性が加わる今季、スペイン王者は新たな魅力を持つチームになるかもしれない。