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急増するJ監督の途中交代は効果的?
1試合平均獲得勝ち点を比べてみた。
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byGetty Images
posted2019/07/12 11:45
2018シーズン途中からガンバ大阪のトップチームを率いる宮本恒靖監督。苦しんだチームを立て直した。
前任よりも勝点が上回る割合は?
理屈では考えられないことばかりが起こるケースは、たしかにある。すると「“ムード”を変えたい」、「刺激を与えるカンフル剤にしたい」といった、論理とはかけ離れたところで、監督交代が起こりがちだ。
はたして、どれほどの効果があるのか。シーズン途中の監督交代の成否について、リーグ戦1試合あたりの勝点で計算をしてみた。
'09年から昨年までの10年間で行われた監督の途中交替は、J1、J2、J3あわせて93回。そのうち前任監督が指揮していたとき、チームが得ていた1試合あたりの勝点を、後任監督が上回ったケースが64回あった。割合にして68.8%となると、何だか非常に有効な手段に思える。
ただ、具体的な勝点で比較してみると、前任の監督が退任するまでに得ていた1試合あたりの勝点が平均1.11。これに対し、後任監督の勝点は平均1.31だった。1試合あたりプラスの勝点0.2。およそ18%のアップ率を、成功と見るのか、横這いの範疇と見るか。意見の分かれるところだろう。
2018シーズンは成功例が相次いだ。
明らかな成功例もある。'09年の大分トリニータ、'13年の栃木SC、'15年の鹿島アントラーズなどだ。
後任を務めたランコ・ポポヴィッチ、松本育夫、石井正忠の各監督は、J1残留、昇格プレーオフ進出といった、それぞれのクラブの願望を達成できた・できないとは別に、1試合あたりの勝点で前任者を1点以上も上回る好成績をおさめてみせた。
興味深いのは、こうしたチームを大きく浮上させる監督交代が、昨シーズンに相次いだことだ。ガンバ大阪の宮本恒靖監督は、レヴィー・クルピ前監督時に17試合で勝点15だったところを、就任後17試合で勝点33をあげる、驚異的な回復ぶりをみせた。
残り5試合でバトンを渡された鳥栖の金明輝監督も、フィッカデンティ前監督時代の倍以上のペースで勝点を積み上げ、J2降格圏に沈んでいたチームを浮上させた。今年5月から監督を再要請されたのは、昨年の手腕があってのこと。
どちらの交代劇も、あらためて振り返るとJリーグ史に残ると言っても差し支えないくらい稀有なものだった。