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「久保建英、中島翔哉の加速が頼り」
トルシエが指摘する前線の重さ不足。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/07/01 11:45
エクアドル戦を「勝てる試合」と表現したトルシエだが、若き日本代表の得たものは大きいとみている。
ひとりでこじ開ける中島は興味深い。
――そうかも知れません。
「日本は攻撃的なチームのイメージを残した。守るためにブラジルに来たのではない。彼らが示したコレクティブでスピードに溢れ、フェアにプレーするスタイルはとても新鮮だった。南米の人々はこの若いチームに熱狂したことだろう。
忘れてならないのはこのチームが、東京五輪を目標に置いた若いチームであることだ。大半はA代表の経験がない新しい選手たちで、彼らは世界レベルを知るために大会にやって来て、発展途上の若いチームというイメージを世界に与えた。私はそんな風にコパ・アメリカを分析する。日本の目標は学び成熟することであり、同時にチームを構築することでもあった。
日本の守備は強固になった。冨安(健洋)と植田(直通)のセンターバックコンビは屈強で、中盤の板倉(滉)も素晴らしかったし、初戦にボランチで出場した中山(雄太)も悪くなかった。板倉と中山のふたりは中盤で頑強な働きをし、柴崎(岳)はチームに多くをもたらした。ディフェンスと中盤のつなぎ役として彼は貴重な存在だった。攻撃ではサイドの選手たち、三好(康児)や久保、特に中島は興味深かった。彼はひとりで相手の守備をこじ開けることができる。
ひとつのチームが生まれたという感触をブラジルで得た。このチームがさらなる経験を積んでいくのが今後の課題だ。もちろん選手の努力も不可欠だが、私はとてもオプティミスティックだ」
――ただ、エクアドル戦に限っていえば、疲れから日本のテンポが落ちたとは言えませんか?
「そうではなくて経験だ。先にも述べた通り、経験を得たためにちょっと弛緩した。この試合で日本の選手たちは、最初の2試合ほどのストレスを感じていなかった。チリ戦もウルグアイ戦も、強度の集中力とディシプリン、戦略が求められて彼らは極度に集中し緊張していた。その結果、高いインテンシティが生まれた。
ただエクアドル戦は違った。ずっとリラックスして高い位置からプレスをかける代わりに、後方で相手の攻撃を待つことを選んだ。相手の攻撃を待ってボールを奪う。テンポが落ちたのは、より落ち着いてプレーすることを日本が選んだからだ。そしてこの領域でこそ日本は進化していかねばならない」