サムライブルーの原材料BACK NUMBER
小林祐希はいつも「人ファースト」。
欧州でも代表でも起業でも同じ哲学。
posted2019/07/02 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Yuki Suenaga
その生き方は、プレーに反映される。
人ファースト。
小林祐希は「一期一会」を地で行く人だ。出会いを大切に“利に成るか”より“理に合うか”を頭に走らせる。2年近く前、彼は東京ヴェルディのジュニアユース、ユースと一緒だった高野光司が23歳で現役を引退したタイミングで会社を立ち上げた。信頼を置く友人のセカンドキャリアを心配して「一緒に何かやろう」と自ら誘って。
日本文化により目を向けていく機会になった。岐阜で日本酒をプロデュースしたり、山形で有機米をつくったり、宮城で湯治とサッカーのイベントを行なったり……。その担い手たちとの交流や触れ合いによって、視野が広がっていく感覚を持つことができた。
人とのつながりから、己を高める。
「自分がやりたいことがあるとしますよね。じゃあそのために人を集めるのかと言ったら、そうじゃない。この人がいるからこういうことができるんじゃないか、っていう考え方なんです。この人とだからやりたい、というのがないと俺はやれない」
ボランチが小林にピタリと合致した。
一例を出したい。
小林の専属シェフは野菜の葉、皮など食材を廃棄しないこだわりを持つ人だという。そういったスタンスに共鳴し、今オフには国分寺の野菜のPRを兼ねて食育のイベントに2人で参加している。人とつながって、「ためになる」面白いことを一緒にやる。理があってこそ動く。
なるほど、彼のプレーを見ていればよく分かる。周りを見て、活かして、納得して、そのうえで己を出そうとする。エール・ディヴィジ、ヘーレンフェーンでの3年間は、そんな小林のスタイルを揺るぎないものにさせた。
ボランチのポジションがしっくりはまったのは運命かもしれない。攻守にチームをつなげていく役目は、むしろ彼の生き様とピタリと合致する。
「自分のプレースタイルは、ドリブルで何人も抜くタイプじゃない。周りを使いながらゲームを組み立てていくタイプなんで、周りがあっての自分。ただ試合中、(周りを)活かそうとか別に考えていないし、サッカーに身を委ねてプレーしている感じです。練習中はどう活かそうか自分がどう活きようかとは考えるけど、試合になったら全然考えていない(笑)」
むしろ“考えなくていい”とも聞こえてくる。