“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20代表の密かなヒーロー若原智哉。
GKとしての急成長の裏にあったこと。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/06/03 17:00
スーパーセーブばかりが取り上げられる若原智哉だが、その才能が最も感じられるのは、適格なポジショニングである。
完全に1対1となった局面でも冷静に。
第2戦のメキシコ戦でも彼のビッグセーブから試合は始まった。
開始早々の1分、MFディエゴ・ライネスのスルーパスから、FWロベルト・デラロサに抜け出され、完全な1対1の場面を作られてしまった。だが、「普段だったら無意識に動いてしまって反応できないパターンだったけど、この時は落ち着いて構えることができた」と、デラロサに対してむやみに飛び込まず、間合いを取って正対している。
「あそこでニアをやられることはGKとしてはダメなことなので、ニアの方に(全体の意識の)65%、ファーは残りのパーセンテージを意識してやりました。そうすれば足でもニアに届くし、上でも手を伸ばすことができる、というシチュエーションに持ち込めますんで」
そうして相手のシュートコースを完全に遮断。若原の狙い通りニアを狙ってきたシュートを、右足でブロックしてCKに逃れた。
このビッグプレーで日本は完全にペースを掴み、終わってみれば3-0の完勝劇。2戦目にしてグループリーグ突破をほぼ手中に収めた。
気になるのはスーパーセーブではなく……。
グループリーグ最終戦のイタリア戦では、開始早々の8分に味方のバックパスミスに対し、ゴールライン手前で掻き出すことに成功。なんとか自滅を防いでもいた。
54分にMFアンドレア・コルパーニのFKが壁に当たってコースが変わるも、鋭く反応して右手一本で弾き出すと、66分にもFWマルコ・オリビエリと1対1の場面で、シュートを冷静に正面で受け止め、最後までゴールを許さなかった。
毎試合飛び出すスーパーセーブにばかり目が行きがちだが、3戦を通じて彼のプレーをじっくりと見ていると――「多くのシュートをことごとく正面でキャッチできているのはなぜか?」という妙な疑問が湧き出てきた。
実際にGKとしてプレーした経験がないほとんどの人には、単に相手のシュートがGKの正面を突いただけじゃないか、と思われるだろう。だが、その回数が不自然なほど多い。その違和感は、初戦のエクアドル戦から感じていたのだが……。