“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20代表の密かなヒーロー若原智哉。
GKとしての急成長の裏にあったこと。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/06/03 17:00
スーパーセーブばかりが取り上げられる若原智哉だが、その才能が最も感じられるのは、適格なポジショニングである。
若原のポジション変化の意味を探る。
エクアドル戦の35分、こぼれ球を拾ったFWレオナルド・カンパーナがペナルティエリア手前の位置から間髪入れずに強烈なミドルシュートを放つが、これを若原が正面でがっちりキャッチ。
このプレーで、いつもの若原とは違うという確信を筆者は得た。
メキシコ戦以降は「若原は、なぜあれほど良いシュートを正面でキャッチできているのか」という部分にフォーカスを当てて、彼のプレーを見ることにした。
すると、メキシコ戦の6分にFWホセ・マシアスの2度のシュートをCB瀬古歩夢がブロックした時、若原のポジションがいつもより深いことに気づいた。
28分にMFアントニオ・フィゲロアのドリブルシュートを正面で抑えた時もそうだった。前半アディショナルタイムに、こぼれ球を拾ったマシアスがペナルティエリア手前から放ったシュートを正面でがっちりキャッチしたシーンでも、彼はいつもより深いポジションを取っていた。
これまでの彼なら、シュートコースを消すために間違いなく前に出ている場面だ。
ところが、この時の若原は、ゴールラインに近いところに立ってから……向かってくるシュートに絶妙なタイミングで反応していた。この時、彼が「はっきりと意図して下がり気味にポジショニングしている」ことが理解できた。
イタリア戦も、23分にDFのクリアのこぼれを拾ったコルパーニのワントラップシュートを、正面でキャッチ。35分にもDFラインのロングパス1本で抜け出したFWガブリエーレ・ゴーリの、ボールの落ち際を叩いた強烈なミドルシュートを正面でがっちりキャッチしてみせていた。
「いい感じでフィットしている手応えがあります」
イタリア戦後、若原に直接「3試合を通して、シュートが正面に飛んでいることが多い。これはポジショニングの取り方を変えたのか?」とぶつけてみると、彼はスラスラとこう答えてみせてくれた。
「実はGKコーチからも『大会前にとっていたポジションだと、海外の選手はロングシュートで対応してきたり、シュートの質をとっさに変えてきたりするので、対応が難しくなるんじゃないか』と言われていたんです。僕もそう思ったので、大会に入ってから自分本来のポジショニングよりも少し下げるようにしてみたんです。
ちょっと下げることでボールが到達する時間も生まれますし、ボール正面に入るステップを運べる時間もできるので、シュートが来てもあまり怖くなくて落ち着いてできていますね。自分でもいい感じでフィットしている手応えがあります」