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U-20代表の密かなヒーロー若原智哉。
GKとしての急成長の裏にあったこと。

posted2019/06/03 17:00

 
U-20代表の密かなヒーロー若原智哉。GKとしての急成長の裏にあったこと。<Number Web> photograph by Getty Images

スーパーセーブばかりが取り上げられる若原智哉だが、その才能が最も感じられるのは、適格なポジショニングである。

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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Getty Images

 ポーランドで5月23日に開幕したU-20W杯。

 南米王者エクアドル、北中米カリブ2位のメキシコ、ヨーロッパ2位のイタリアという“死のグループ”を、3戦負けなしの1勝2分けの成績で決勝トーナメントに進出したU-20日本代表だが、その予選突破の立役者となったのが、ゴールキーパーの若原智哉である。

 3戦で失点はわずかに1。初戦のエクアドル戦では自らのパンチングが味方に当たってゴールに入ってしまう苦しい立ち上がりとなったが、0-1で迎えた51分、試合だけでなく今大会全体の流れを変えたと言っても良いビッグセーブを見せた。

 この時、日本はエクアドルに痛恨のPKを献上。これが決まれば流れ的にかなり窮地に追い込まれるのは、誰の目から見ても明白だった。

起死回生のビッグセーブ!

 エクアドルのMFジョルダン・レサバラがボールをセットし、左足で蹴るべく、かなり角度を取って助走をとった時だった。

「PKを取られてから少し時間があって、気持ちに余裕もありました。事前のスカウティングでは9番(エースのカンパーナ)が蹴ると言われていて、GKコーチにも9番の選手が以前に蹴った方向は教えてもらっていた。でも蹴った選手が違って、ここは自分が思った方向に飛んだらいいと思った。それで何か……キッカーが立った時にこっち(若原から見て左)やろうなというのが分かったんです」

 助走した角度から蹴ってくる方向を敏感に察知した若原は、蹴ってくる瞬間の相手の動きを瞬時に捉えながら、「間違いない」とインパクトの瞬間に思い切って左へ飛んでいた。次の瞬間、ボールは若原の読み通り、その両手によって弾かれていたのである。

 チームに勢いをもたらす起死回生のビッグセーブ。若原が作り出した流れをチームは無駄にせず、MF山田康太の同点ゴールで初戦を1-1のドロー決着に持ち込んだ。

【次ページ】 完全に1対1となった局面でも冷静に。

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