“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20代表の密かなヒーロー若原智哉。
GKとしての急成長の裏にあったこと。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/06/03 17:00
スーパーセーブばかりが取り上げられる若原智哉だが、その才能が最も感じられるのは、適格なポジショニングである。
GKの真の評価軸はどこにあるのか?
GKの真の評価はビッグセーブを何回したかではなく、いかに味方にストレスなく、安定してゴールを守りきれるかどうかにある。
3試合連続で見せた、試合の流れを変えるビッグセーブは、すべて若原の入念な準備と繊細なポジション意識によって成り立っていたのである。
このように自分のプレーの変化を客観的に理解していたからこそ……エクアドル戦でPKを止めることにより周りから“ヒーロー”扱いされた後でも、自らを見失わずにプレーできていたのだ。
「失点も僕のパンチングからですし、結局チームが勝っていないので、僕自身ではあまり『チームを救った』という感情もありませんでしたから。周りはそう(ヒーロー)言ってくれますが、やはり失点してしまったことがチームとしても個人としてもよくないことなので、そこはもどかしい気持ちがありましたね。なのでメキシコ戦以降はPKのことは忘れて、ゼロに抑えることに集中しました」
「2人の想いも受け取ってやっているつもり」
今回の抜擢は、正GKと見られていた大迫敬介がA代表召集のために外れ、セカンドGKを争っていた谷晃生が負傷で選外となり、若原にとっても「こぼれてきたチャンス」でしかないのかもしれない。
だが、彼はその事情を全面的に受け入れながらも、託された日本のゴールマウスを逞しく、勇ましく、そして頭脳的に守り続けている。
「(大迫と谷の)2人は励ましの連絡をくれますし、2人の想いも受け取ってやっているつもりなんです。
それにベンチでは(茂木)秀くんとか(鈴木)彩艶が僕のサポートをしてくれて、いい状態でピッチに送り出してくれるので……そういう人たちのためにも、自分が試合で活躍をして恩返しをしていきたいです」
次なる戦いは一発勝負の決勝トーナメント。
しかも相手はアジアのライバル韓国に決まった。
1つのミスが失点に直結する、また一段とハイレベルな緊迫した戦いが始まるだけに、彼の存在はますます重要となってくるはずだ。
全てはチームのために。そして己の成長のために。
若原智哉は日本のゴールマウスに威風堂堂、立ちはだかり続けるはずだ。