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男子マラソン3強の1人、井上大仁。
ボストンの教訓は「コース研究」。 

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西本武司(EKIDEN News)

西本武司(EKIDEN News)Takeshi Nishimoto

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posted2019/06/01 17:00

男子マラソン3強の1人、井上大仁。ボストンの教訓は「コース研究」。<Number Web> photograph by EKIDEN News

4月のボストンマラソンで2時間11分53秒、12位でゴールした井上大仁。

「国内無双」となりつつある井上。

 そんな2人とは違う道を選んだのが井上大仁だ。

 昨年8月のジャカルタ・アジア大会で2時間18分22秒で優勝。タイム以上に暑さの中で接戦を制した勝負強さが高い評価につながった。

 そしてそこからは「国内無双」とも言える走りを見せていく。

 2018年11月の八王子ロングディスタンスでは10000mで27分56秒27の自己ベストを叩き出し、年明けのニューイヤー駅伝ではエース区間4区(22.4km)で、9位から各チームのエースを抜き去って区間賞。勝負強さだけではなく、キレのある走りを見せた井上は、設楽、大迫に続くマラソン日本記録更新を狙えるのでは、という憶測も流れた。

ボストン参戦を選んだ3つの理由。

 だが、井上はMGCのシーズンインにボストン・マラソン出場を選んだ。ボストンは厳しいコース設定で記録を狙うレースではない。井上本人や周囲に聞いた話を総合すると、ボストンを選んだのは以下の理由だったという。

<ペースメーカーがつかない>
 MGCや世界選手権、オリンピック同様、ボストンはペースメーカーがつかない勝負勘の試されるレースだ。2017年世界陸上ロンドンでは後方集団で走った川内優輝、中本健太郎とは違い、スタート直後から先頭集団に果敢に挑んだ井上だが、ついていけたのは15~20kmまで。

 世界トップクラスのランナーが繰り出す小刻みなアップダウンに現在はどこまでついていける力があるのか。その見極めをするため。

<終盤に坂道がある難コース>

 ボストンは前半は下り基調で、終盤は「心臓破りの丘」で有名な強烈な上り坂が続く難コース。MGCも前半5kmは下り、最後の5kmは上りとコースレイアウトも似ている。心臓破りの丘をMGCラスト5kmと見立てることで、課題を見つけておく。

<東京オリンピックマラソン参加標準タイム突破>
 今年3月に発表された東京オリンピック参加標準タイムは、2時間11分30秒。そのタイムを「2019年1月1日から2020年5月31日まで」に出さなければいけないが、暑い時期に行われるMGC本番だと、このタイム設定はなかなか厳しい。

 ただし、ボストンのようなマラソンワールドメジャーズ加盟レースで10位以内で走ると、タイムにかかわらず同等の扱いとなる。つまり2時間11分30秒以内、もしくは10位以内でボストンを走り終えておけば、スローペースが予想されるMGC後に参加標準を切るためだけにマラソンを走る必要がなく、オリンピックへの調整に専念できるからだ。

【次ページ】 スタートと同時に飛び出したが。

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