水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
水沼貴史が詳しく語るCLの新潮流。
なぜアヤックスとプレミアが台頭?
posted2019/05/31 11:45
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph by
AFLO
UEFAチャンピオンズリーグがいよいよクライマックスですね。6月1日のファイナルを前に、今大会の総括と、一発勝負となる決勝戦の見所を考えてみたいと思います。
今季のCLは、現代サッカーを象徴する大会になっていると感じました。
まずは決勝に進んだトッテナム、リバプールの話の前に、躍進が目立ったアヤックスの話を。
予選から参加したアヤックスは、19歳でキャプテンマークを任されるDFマタイス・デリフト、来季からバルセロナに加入する22歳のMFフレンキー・デヨングと、将来有望な選手を多く擁し、難敵も恐れない果敢なサッカーを展開しました。
解説していても面白いチームでしたし、印象に残った方も多いことでしょう。とはいえ、バイエルンがいるグループを勝ち抜き、決勝トーナメントでレアル・マドリー、ユベントスという優勝候補を撃破した戦いは、決してフロックではありません。
そこにはオランダサッカーの近年の取り組みが象徴されていました。
個の勝負重視のオランダに変化が。
2010年W杯で準優勝、'14年W杯3位となった一方で、'16年ユーロと'18年W杯では予選敗退するなど、オランダサッカーは近年低迷していました。伝統的に多くのウイングタイプの選手が台頭してきましたが、その分バランスを重視するあまり、モビリティが少ない傾向がありました。
思い出すのは、現地で見た'00年のEURO。ベスト4には残りましたが、これでいいのか? と見ているこちらが不安になるほど、個に固執していたイメージがありました。そこに愚直にこだわり続けるのもまたオランダなのだ、と納得した記憶があります。
だからこそ今季のアヤックスの戦いには衝撃を受けました。
ペップの影響を受けたエリク・テンハーフ監督に率いられ、極端なほどコンパクトで速いサッカーをCLの舞台で展開したからです。昔のようにウイングがサイドに張ることはほとんどなく、ハキム・ツィエクやダビド・ネレスはポジションこそサイドですが、前線を自由に動き回って相手を混乱に陥れました。