ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
去るアザール、控えで腐らぬジルー。
チェルシーEL優勝で美しく終わる縁。
posted2019/05/31 10:30
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph by
AFLO
去りゆく者あれば、残る者もあり。アゼルバイジャンのバクーで行われたヨーロッパリーグ決勝、チェルシー対アーセナルのイングランド対決で勝負を決めたのは、今季限りでおそらくチェルシーを退団するエデン・アザールと、つい最近クラブとの契約延長にサインしたばかりのオリビエ・ジルーだった。
4-1でアーセナルに完勝したチェルシーの中心は、やっぱりこの男だった。前半こそ決勝戦ならではの慎重な立ち上がりで、両チームともになかなかエンジンがかからない展開だったが、徐々にチェルシーを温めて流れを手繰り寄せたのが、ボールを受けると一瞬でギアを入れてドリブルやパスで攻撃を加速させるアザールだった。
左サイドからの鋭利なドリブルで対面するアーセナルの21歳、エインズリー・メイトランド・ナイルズを翻弄したかと思えば、左サイドバックのエメルソンのオーバーラップをうまく促してチャンスを作る。またふらふらと中央へ移動していって鋭い縦パスを通したりと、決勝の大一番でもいつものペースで楽しそうにスキルとアイデアを披露する。
ボールを持てば、何かが起こる。そう感じさせるような、名前の通り「hazard(危険)」な香りを漂わせながら、アザールは常に得点機をうかがっていた。
爆発したのは、マウリツィオ・サッリ監督が「自分たちのフットボールを続けて、強い気持ちを見せろ」と発破をかけた後半だ。ペドロへのアシスト、さらにPKと流れの中からの1得点ずつで2ゴール1アシスト。チェルシーのエースたるゆえんをこれでもかと見せつけ、チームを優勝に導いた。
3ゴールに絡んだジルーの貢献度。
一方のジルーは、49分にゴールラッシュの口火を切る先制ゴールを決めた。左サイドからエメルソンが入れたクロスに、ダイビングヘッドで飛び込んだ。点で合わせる匠の技。ワンタッチゴーラーの面目躍如とも言える一発で、チームを勢いに乗せた。
ジルーもまた、この日は計3ゴールに絡んでいる。
チームの3点目は、ペドロのスルーパスに反応したジルーがボックス内で相手DFに倒されて得たPKだった。アーセナルにとどめを刺した72分の4点目は、アザールとの見事なワンツーから生まれた。
中盤でボールを奪ってゴールへ向かうアザールのドリブルに合わせ、ボックス内で左方向に開きながらパスを受け、左足でフワッと浮かせる技ありのリターンパス。まさに阿吽の呼吸で、綺麗なショートカウンターだった。