水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
水沼貴史が詳しく語るCLの新潮流。
なぜアヤックスとプレミアが台頭?
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byAFLO
posted2019/05/31 11:45
馬力を感じさせるシソッコ(右)のプレースタイル。水沼貴史氏はその能力に注目している。
クロップと選手の信頼感がすごい。
リバプールは、本当によく走るイメージがあります。特に前線の3トップがあそこまで動き回るチームは他にないですから。でも、バルサ相手に大逆転した試合では、ロベルト・フィルミーノやモハメド・サラーがいませんでした。
それが、代わりに入ったディボク・オリジが2点、我がままなキャラのジェルダン・シャキリも献身的なプレーを見せました。シーズン序盤こそ重宝されていたシャキリですが、中盤以降は出番が減っていました。
それでも、試合終了時に彼がクロップに抱きついたのは、控え選手との間に信頼感、関係性があることを示した印象的なシーンでした。
だって、バルサ戦の途中出場のジョルジニオ・ワイナルドゥムだって「なんで俺を使わないんだ!」と言わんばかりの勢いで2得点ですからね。
そういう選手の反骨心の使い方がうまいですね。やっぱりクロップは選手の適性をしっかりと見てるんだろうなと感じますよ。
クロップ本人は「驚き」だって言っていましたけど、普段から見て、信頼があるからこそ、使うわけですから。
キーマンはケインとフィルミーノ。
最後に、決勝のキーマンをあげてみましょう。
トッテナムはやはりエースのケインでしょう。
ケインが復帰すれば、サイドからの攻撃の迫力は増す。ジョレンテとはまた違って、どんな速いボールでも前に出て合わせることが抜群に上手い。あと、落ちてパスも捌ける。チームに安心感や安定感をもたらす存在ですね。
ケガの具合にもよりますが、欠場した準決勝セカンドレグの試合後、嬉しそうにピッチを走り回っている姿を見ると、たぶん大丈夫でしょう(笑)。
推進力のあるシソッコ、1本のパスで打開できるクリスティアン・エリクセン、ソン・フンミンのようなキレがある選手がいて、絶好調のルーカス・モウラも、高さのジョレンテもいる。トッテナムは、ひとりひとり見ていても面白い選手が揃っていますよね。
リバプールは……フィルミーノかな。
強烈な両翼(サディオ・マネ、サラー)を活かせているのは、真ん中にいるフィルミーノの献身性のおかげです。得点数は3トップの中で1番少ないんだけど、トップで張るだけじゃなく、少し落ちてボールが受けられるし、その後にしっかりと自分も前に出ていく動きが出せる。リバプールは、守備も攻撃もスイッチを入れているのは彼なんですよ。
ドイツにいた時はあんなに頑張れる選手だとは思わなかったですけど、それだけクロップがしっかりトレーニングで教え込んでいるという証拠でしょう。じゃなかったらあんなに走らないですよ(笑)。