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新CL案が欧州サッカーを変える?
弱肉強食を加速させる1通の手紙。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/30 10:30
現行のCLを大きく変えうる試案を示したユベントスのアニェッリ会長。サッカーの資本主義化に拍車がかかるのか。
日本代表経験のある元選手の言葉。
各国リーグでの好成績は、翌シーズンの新CL出場には直結しない。
4大(あるいは5大)リーグ以外のクラブにとっては、かなり狭き門になる。今季のアヤックスのような物語には、もう出会えなくなるかもしれない。
もしも、このような新CLが誕生すれば、間違いなく世界で一番スポンサーを惹きつけるリーグになるだろう。一方で、新CLと各国リーグは、ほぼ断絶されることになる。各国リーグは、現状の本選出場を争うプレーオフよりも格付けは下になる。
欧州でプレーした、日本代表経験のある元選手が話していた。
ヨーロッパでは、Jリーグのようにすべてのチームがリーグ優勝を目指すなどと発言することはあり得ない。1部残留などそれぞれの目標は明確で、その代わりに上位数チームは突出した力を誇る。そうした数チームがリーグをけん引するのが健全だと思う、と。
プレミアが発した新CL案への警告。
最近ではトップ6、以前にはトップ4などと言われていたが、資金などの“力”のあるチームがプレミアリーグをけん引してきた。そのイングランド勢による今季2つの欧州ファイナルの独占は、排他的なエリートリーグの誕生よりも、まだ健康的だと言えるかもしれない。
「裕福で支配力のあるわずかなクラブを利するのみで、リーグと国内で勝負する大多数のクラブに打撃を与える」
現在の富める者で、もしかしたら明日の敗者。プレミアリーグは、新CL案にそう警告を発している。
プロは結果でしか評価されない。強いのは、勝った者。そうした弱肉強食の論理が支配するヨーロッパで、共存共栄などという言葉を誰も信じてはいない。必ずしも独り勝ちは良いものではないと、今季の各国リーグが教えてくれているはずなのに。
この強欲は、世界の流れをどう変えていくのか。