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焦らず、崩れず、逆転勝利した鹿島。
ACL優勝が変えたクラブの目標設定。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/05/23 17:00
ACLを制覇してCWCを戦うことは鹿島にとって、もはや「何年かに一度達成すればいい」という目標ではないのだ。
白崎「焦れることが一番危険だった」
鹿島は丁寧にボールを繋ぎながら、相手を動かそうと試みる。しかし、横パスは容易に繋がるが、効果的な縦パスを入れることはできなかった。それでもピッチに立つ選手たちは落ち着いていたという。
「押し込んでいてもチャンスが作れていなかったら苦しいけれど、チャンスや(得点の)雰囲気はめちゃくちゃあった」と土居。
「今日の試合は焦れることが一番危険だった。監督からも『焦れるな』と言われ、その通りだなって。焦れれば相手の思う壺だと思った」と白崎凌兵も振り返る。
山東の狙いはボール奪取後のカウンター攻撃。ロングボールを前線に送り、フェライニやペッレの個人能力に賭ける。
「カウンターだけが相手の狙いだったと思う」と犬飼智也。そこへの注意はチームの共通認識でもあった。
「アウェイで戦ったとき(2-2)も山東にはチームとしての強さを感じることはなかったので、焦ることもなかった。90分あるので、前半は横に振りながら相手を疲れさせるというのは共通意識として持っていた。
だからそんなに急ぐこともなかったし、ボールを持っているときの斜めの動きも使えていたし、やることが整理できていた。失点はしましたけど、取り返せるという余裕もあったので、それほど気にはならなかった」と三竿も話す。
引き分けでも突破は決まったが。
「これを続けていけばチャンスは来る。そこを仕留められたらいい」と白崎の言葉通りの展開が待っていた。
後半に入っても鹿島の攻勢が続くが、山東もゴールを死守する。そして後半10分、大岩剛監督が動いた。右サイドの永木に代わり、山本脩斗を送り出す。続けて後半16分、中村に代えて伊藤翔を投入。アウェイの山東戦で2得点している伊藤だったが、3月17日の札幌戦以降ゴールから遠ざかっていた。
後半23分。レオシルバが蹴った左コーナーキックを山本がバックヘッド。DFに当たり自身の前に転がったボールを伊藤が蹴り込んで1-1。このままでも突破は決まるが、鹿島は一瞬も緩むことはなく、逆にスイッチが入った。
「同点になった時点でも、下がらず前からいこうというのは、出ている11人の中で揺るがなかった。もう1点獲りに行くという圧力をかけたかった。そのためにもハイプレスに行く必要があったし、どう戦うかというのは整理できていた」と白崎。犬飼も「相手がどうこうよりも、自分たちがスイッチを入れた」と証言する。