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焦らず、崩れず、逆転勝利した鹿島。
ACL優勝が変えたクラブの目標設定。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/05/23 17:00
ACLを制覇してCWCを戦うことは鹿島にとって、もはや「何年かに一度達成すればいい」という目標ではないのだ。
「一喜一憂しない」ことが鹿島の強さ。
今季清水から加入した白崎は、鹿島の持つ雰囲気について「一喜一憂しない」と表現した。
「試合に向けて特別な雰囲気を作っていくわけではないですけど、ひとりひとりの戦術理解度が高いし、サッカーに対して強い気持ちを選手それぞれが持っていて、試合になるとその集中力がグッと集まって、みんなが同じ気持ちで試合に向かっていく。
一喜一憂しないのが鹿島の強さじゃないですか。シーズンは長いので1勝で浮かれたり、1敗で落ち込みすぎてもダメだと思うので。負けていようが自分たちのやっていることに間違いはないっていう自負がある。それがうまくいかないときも、話し合いながら、お互い求めあう。選手みんなが自分の意見を持っているし、そのうえで仲間の意見を聞ける。自分がいいプレーをしたいというのではなく、まずはチームが勝つために何をすべきか、何ができるか。
それが強い集団を作っていると思うし、勝つためのプレーができないと評価されないクラブなので。ACLのグループリーグを勝ち上がれたこと、それがすべて。過程も大事ですけど、苦しんで突破できたのは絶対に次に繋がる」
勝てなければ意味がない、という宿命。
6月下旬のノックアウトステージ初戦の相手は広島に決まった。
「広島のことは、まだ考えていない。まずは次の鳥栖戦で最高のプレーをすることを今、選手たちは一番大事にしなくちゃいけない」と三竿は言い切る。そして、目指すものはまだ先にあるとも語った。
「今日は勝ちましたけど、もっと良くなると思うし、僕たちはもう一度ACLで優勝することを目標にやっている。もっともっと、去年優勝したというプライドや強さというのを見せていかないといけない」
勝利のための頑張りが報われない試合も当然ある。いかに良いサッカーができても勝てなければ意味がない。それが鹿島アントラーズというクラブが自らに背負わせた宿命だ。
だからこそ、勝利が自信となり、パワーとなり、迷いを消す。リーグ戦3連勝の勢いが山東戦の勝利に繋がったのはいうまでもない。そして数々の勝利の経験、鹿島の歴史が引き寄せた勝利でもあった。しかし、グループリーグを勝ち抜いただけで、その喜びに酔うことは許されない。