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DVでの出場停止から復帰した同僚を
迎え入れたカブスとダルビッシュ。 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2019/05/18 11:30

DVでの出場停止から復帰した同僚を迎え入れたカブスとダルビッシュ。<Number Web> photograph by AFLO

アディソン・ラッセルはメジャーに帰ってきた。自分にできることをする、それが彼の唯一の選択肢なのだ。

メジャーリーグ機構は厳罰姿勢を打ち出す。

 メジャーリーグでも、史上初のFourty-Fourty(同一シーズン40本塁打&40盗塁以上)達成者ホゼ・カンセコ(元アスレチックスほか)や、生涯とシーズン両方のメジャー最多本塁打記録を保持するバリー・ボンズらのDVがニュースで大きく取り沙汰された。

 その後、同様の事件がニュースとなり、その結果、メジャーリーグ機構は2015年にDVに対する罰則規定を設け、いわゆる「Zero Tolerance=どんな規律違反も寛容に対処せず、厳しく罰する」の姿勢を打ち出した。

 DV加害者へ向けられる視線は、たとえば禁止薬物の規定違反を犯した選手のそれとは少し違っている。それがスポーツ界だけの問題ではなく、社会全体の問題だからだ。

 家庭内暴力の被害者の救済が公然と行われるようになったのは、ごくごく最近のことだ。その現状では、彼のような加害者はただの「悪者」になってしまう。

 だから、ラッセルの処分が決まった時、カブス・ファンの反応はあまりポジティブなものではなかった。新聞の電子版の書き込み欄や、言いたい放題のSNS上では、ラッセルを完全否定するような言葉が並ぶこともあった。去年の11月下旬にカブスがラッセルと再契約した際も、それに対する反対意見がネット上に溢れた。

 曰く「カブスのラッセル支援はDV被害者に対する裏切り行為だ」と。

「これをすれば許される」ラインは存在しない。

 カブスのオーナーであるトム・リケッツ氏は当時、こう言っている。

「簡単な決断ではありませんでしたが、我々は彼を見捨てるのではなく、支援することを決めました。そして、これはDV被害者の支援に反する行為ではありません」

 ジェッド・ホイヤーGMも、こう続けた。

「我々も他の人たち同様、感情的な反応をしました。しかし、セカンド・チャンスを与えることが正しいと思ったのです」

 それ以来のメジャーリーグ復帰である。

 ラッセルは試合前、「とても厳しい時間を過ごしてきた」と正直に言った。

「これにフィニッシュ・ラインはないんです。これからも良い人間になるための取り組みを続けていきます」

 フィニッシュ・ラインとはつまり、人々から許されることだろう。それが「ない」と本人が言うのは、彼が「許されることはない」と覚悟しているからだろう。事実、ラッセルが第1打席に登場した時、圧倒的多数の声援の中に、はっきりとブーイングが聞こえた。

【次ページ】 かつては「愛すべき選手」だった。

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