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イチローと松井秀喜の野球指導観。
共通する、データ偏重への違和感。
posted2019/05/17 11:30
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
AFLO
イチローと松井秀喜。
平成の日米野球界を背負ってきた2人のスーパースターが、スポットライトが当たる華やかな舞台から身を引いた。現役を引退した2人が今、ともに米国で若手の指導に携わっているのは、果たして偶然だろうか。
今年3月21日。日本での開幕2連戦後、現役引退を発表したイチロー氏は、マリナーズの会長付特別補佐の立場と同時に、メジャーとマイナーで指導するインストラクターに就任した。本拠地シアトルでの試合前だけでなく、メジャーが遠征中の期間には、シアトルから約60km離れた3Aタコマの練習にも足を運び、打撃、守備、走塁などすべての面で指導する役割を担うことになった。
「すごく楽しみですね」
練習着姿でグラウンドに立つイチロー氏の姿は、引退前と何ら変わらない。ただ、時には打撃投手を務め、ケージの裏から選手の動きを見つめることはあっても、打席に入ることはない。今後、後輩達に何を教え、何を伝えていくのかは不明だが、イチロー氏自身にとっても、野球人としての新たなスタートであることは間違いない。
松井秀喜もアメリカで指導している。
2012年を最後に引退した松井氏は、'14年に巨人の宮崎キャンプで臨時コーチを務めた後、'15年からヤンキースのGM特別アドバイザーに就任した。その後、3Aスクラントン、2Aトレントンなどのマイナーを巡回し、若手へアドバイスを送っている。
これまでに、今やメジャーの主軸として成長したアーロン・ジャッジ、ゲーリー・サンチェスらの成長を間近に見届けてきた。今季、3Aに初昇格し、めざましい活躍を見せている加藤豪将には、昨季2Aで打撃指導を行った。
「去年くらいからメジャーに非常に近くなってきている感じがします。去年、ちょっと(指導)しましたけど、彼がどう昇華したのか。まだ24歳、体の力がついてくればまた違った面も出てくるでしょう」
自ら携わった選手が、見違えるように成長していく過程に、松井氏は選手時代とは、また違う喜びを感じているのかもしれない。