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DVでの出場停止から復帰した同僚を
迎え入れたカブスとダルビッシュ。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/05/18 11:30
アディソン・ラッセルはメジャーに帰ってきた。自分にできることをする、それが彼の唯一の選択肢なのだ。
ダルビッシュが清原に向けた言葉を思い出す。
その中には当然、ダルビッシュも含まれている。
彼はかつて、覚せい剤使用の罪に問われた清原和博氏の『告白』という本を読んだ時、自身のブログでこう綴っている。
「甘いとか自業自得とか聞くけど、そんな理由で人の人生を消してもいいのでしょうか? あなたのお子さんが同じ境遇になったらどうしますか? 自分は誰がなんと言おうが応援していきます!」
そんな気持ちは、ラッセルにも向けられていた。
「女の人を殴るってのは、人に危害を加えるんだから、覚せい剤とかとはまた、ちょっと違うのかなとは思うけど、本人も罪を償って、相手に対しても申し訳ないという気持ちをずっと持ち続けるのであれば、セカンドチャンスは与えられるべきだとは思う」
彼は言った。
「普通に一緒にいて話しかけて、なるべく1人にしないってことが大事だと思う」と。
そう、ラッセルは1人じゃない。
彼にとって「もう1つのファミリー」に。
セオ・エプスタイン編成本部長は、こう言った。
「我々は家庭内暴力について、数多くの専門家たちと話し合い、全責任を取る決断をし、去年の11月、彼(ラッセル)と再契約することを決めました。彼に条件付きでセカンドチャンスを与える決断をしたのです。
それ以来、彼は感情をコントロールすること、コミュニケーションの取り方についてのカウンセリングを何度も行ってきました。
そして彼だけではなく、選手全員、監督やコーチ、球場で働く従業員に至るまで、DVについての理解を深める努力をし、実際に地元のDV被害者の支援をしたり、それを未然に防ぐ取り組みをやってきました。それはこれからも継続していきます」
加害者を孤独にさせない、親族や友人以外の、もう1つのファミリー(家族)。
それがシカゴ・カブス。
アメリカのプロ野球チームだ。