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リレーは常にリスクと背中合わせ。
4×100の失格と、日本の“匠の技”。
posted2019/05/13 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
5月11日は、新横浜が熱かった。
午後3時10分からはBリーグの優勝決定戦、アルバルク東京と千葉ジェッツの熱戦があり、会見で監督と選手たちの話を聞いてから歩いて日産スタジアムに向かい、世界リレーへとハシゴした。
世界リレーの方は取材申請をしていなかったので、切符を買って入場したが、メインスタンド側でフィニッシュラインに近い「ゴールドシート」が7500円、いちばん安い「ブロンズシート」が2500円。
内容から考えると、この買い物はかなりお買い得だった。
世界のスプリンターの走りは、とてつもない娯楽なのだ。
スタジアムから自然と湧き上がる「ウォーッ」という歓声が、観戦気分をさらに盛り上げる。特に日曜日のセッションは雰囲気もよく、さらにスタート時に「シーッ」という導入音がないにもかかわらず、スタジアムが静寂に包まれるのは、かなり感動的な瞬間だった。
日本の観戦マナーは、世界に誇れると思った。
レースで印象的だったものをいくつか列挙すると、
・混合シャトルハードルリレーは、意外に面白い
・女子マイルリレー(4×400mリレー)でのポーランドのタフさ
・男子4×100mリレーでのブラジルの逆転勝利
・ジャマイカに元気がない
といったシーンが思い浮かぶ。
注目度は低いが、実は有力なマイルリレー。
日本では、久しぶりに男子のマイルリレーが存在感を見せた。
現在の日本記録は、なんと1996年にアトランタ・オリンピックでマークされた3分00秒76(苅部俊二→伊東浩司→小坂田淳→大森盛一)。
日本は土曜日に行われた予選で、3分02秒55をマーク。決勝ではタイムを3分03秒24と落としてしまったものの、1走のウォルシュ・ジュリアン(リオデジャネイロ・オリンピック代表)が充実の走りを見せ、好調ぶりをうかがわせた。
日本では100mとマラソンという、距離だけを見れば両極端な種目に注目が集まっているが、今後は、400mのウォルシュや、2×2×400mリレーで銅メダルを獲得した高校3年生、クレイアーロン竜波の走りも楽しみにしていきたい。
特にクレイアーロンは中学時代から別格で、高校に入ってからも数多くの感動的なレースを見せており(ぜひとも2018年の南関東大会決勝の動画を見て欲しい)、高校生のうちに日本記録を樹立しても私は驚かない。彼の登場で、高校の800mはレベルが上がっており、何かを変えてくれそうな気配に満ちている。