オリンピックへの道BACK NUMBER
やり投げ日本新・北口榛花の履歴書。
競泳と掛け持ち、チェコ修行で開花。
posted2019/05/15 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
先日行なわれた陸上の木南道孝記念大会で、素晴らしい記録が生まれた。
その主人公は、やり投げの北口榛花(きたぐち・はるか)。4投目に自己ベストを更新、さらに5投目ではそれを大きく上回る64m36をマーク。これは従来の日本記録である63m80を大幅に更新する新記録であり、今シーズンの世界ランクでも6位に相当する記録であった。
この記録により、今年行なわれる世界選手権はもとより、フィールド種目としては東京五輪の参加標準記録を突破した最初の日本人選手ともなった。価値ある一投で優勝を遂げた。
今回の大会は、今まで逸材と言われてきたものの、なかなか殻を破れなかった北口が、不振を脱却したことを明確に示した試合でもあった。
入部2カ月で北海道大会優勝。
北口はユニークな経歴の持ち主だ。小中学生の頃は、競泳とバドミントンに励んでいた。バドミントンでは小学生の頃、団体で全国優勝を果たした経験も持っている。やり投げは野球などを経験している選手も珍しくはないとはいえ、やはり、異色と言える。
高校では当初、競泳に取り組もうと考えていた。そのとき、転機が訪れた。陸上部の顧問が170cmをゆうに超える体格に着目し、陸上に勧誘したのである。北口は、競泳と陸上を掛け持ちすることにした。
すると瞬く間に開花する。入部して2カ月ほどで出場した北海道大会で優勝したのだ。
その後は陸上に専念。2年生でインターハイ優勝、3年生のときには世界ユースで優勝を果たすまでになった。また、日本陸上競技連盟による若手有望選手育成プログラム「ダイヤモンドアスリート」にもサニブラウン・アブデルハキームらとともに認定されるに至った。
大学1年で迎えた2016年シーズンは、五輪参加標準記録突破まであとわずかに迫り、リオデジャネイロ五輪出場が見える位置にたどり着いた。ただ、日本選手権は故障を抱える中で迎え、切符を手にすることはできなかった。