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北朝鮮・平壌マラソン参戦記、後編。
10万人の大歓声が虚しく響く。

posted2019/05/13 08:05

 
北朝鮮・平壌マラソン参戦記、後編。10万人の大歓声が虚しく響く。<Number Web> photograph by Takashi Sahara

平壌マラソンでゴールしたサハラタカシ氏。金日成スタジアムで誇らしげな表情を浮かべるが、タイムは……。

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サハラタカシ

サハラタカシTakashi Sahara

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Takashi Sahara

 挑戦中毒、サハラタカシが挑戦を決めた平壌マラソン。北朝鮮入国前の大変さを味わい、ツアー初日、2日目とマラソン参加へのQ&Aに当惑しつつ、平壌の街並みを見学した。そしてレース当日の朝を迎える。

<ツアー3日目(4/7日曜日)>

 レース当日、起床時間は予定通りの5時。準備していたカレーとうどんを食べたが、あまり喉を通らない。ここで1つハプニングが起きる。ホテルで購入した水に粉末のポカリスエットを溶かしたところ、土のような味がしたのだ。

 よく水を見てみると、高麗人参のマークがあった。ハングルが読めないのでわからないが、高麗人参エキス配合の水なのかもしれない。前夜の段階でホテル売店の水は売り切れだったので諦めるしかない。より効能が上がることに期待しよう。ひどい味ではあるが……。

 ホテル出発は7時だったが、エレベーターが来ないので29階から階段でダッシュ。途中の18階辺りで階段が消える謎の設計で少し焦ったが、出発にギリギリ間に合った。

 ブリーフィングでは全員集合すればスタート、というようなラフなスタイルの大会だと聞いていたが、少なくとも今年は厳格に時間が決まっていたようで、8時開場、8時半開会式、9時レーススタート、13時閉会式だった。

 会場に着くとスタンドは大賑わい。前日の説明では10万人の観客が来るとの噂だったが、あながち嘘ではなさそうだ。日本で聞いた話では、現地の人と外国人で走るコースかタイミングが分けられるとも聞いていたが、完全に同時スタート。そしてレース中も写真撮り放題との言質を得た。

 スタート前、携帯を持って走るか迷っていたが、そうであれば持って走るしかない。開会式のセレモニーが始まると、外国人は写真を撮るために整列を崩していたが、ローカルの人々は一糸乱れぬ行進で整然と並び、私語も一切なかった。

日本のテレビ局から取材を受けた。

 レースはフルマラソン、ハーフ、10km、5kmの4部門に分かれていたが、思いのほか、参加者が少ない。多く見積もっても2000人くらい、フルマラソンに限れば500人程度だったように思う。レース前も写真撮り放題だったので、先頭に並んで撮ったり、観衆を撮ったり、好き放題できた。

 同行した“ニワトリ”というあだ名の後輩と日本語で会話をしていると、日本のテレビ局の記者からインタビューを受けた。「どうしてこのレースに?」との質問に、一瞬ウケを狙おうかと思ったが、記者の背後で公安の人がメモを取っていた。

 それもあって、当たり障りのないコメントに終始した。なおこのやりとりはほとんどのキー局のニュースで流れたようで、帰国するとものすごい数の“目撃証言”が寄せられた。

【次ページ】 お祭りムードの外国人の一方で。

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